2013/11/29

地テシ:050 「ショーシャンク」三劇場と川の関係

さあ、「ショーシャンクの空に」公演もラストスパートを迎えました。全五都市二十四回の公演ですが、残りは二都市六回。名古屋・名鉄ホールと松本・まつもと市民芸術館。おかげさまで好評ですが、客席が若干寂しいことになっています。中部地方にお住まいの方は是非ご来場下さいませ。


さて、前回のネタとして、サンシャイン劇場が建っているのはかつて刑務所があった場所だと書きました。刑務所のあった場所で刑務所の舞台をやる。嘘のような本当の話です。まあ、だからなんだって話でもありますが。

では、と思って、今回回る五会場について調べてみました。そして「今回回る」と書くと「回」という字が続くことにも気付きました。なんかグルグルしてますよね。音楽グループ「口ロロ(くちろろ)」にも繋がる面白さです。いや、回の字はこの回どうでもいいんです。ぐるぐる。

大阪公演が行われた「サンケイブリーゼホール」は株式会社サンケイビルが運営するブリーゼタワーの中にありますが、この土地にはかつて大阪サンケイビルが建っていました。そしてその中には「サンケイホール」が併設されており、色々な出し物が催されておりました。我々劇団☆新感線も一度だけ公演を行ったことがあります。
なお、ブリーゼタワーには産経新聞大阪本社が入っていますが、現在の産経新聞は元々は大阪の日本工業新聞が母体ですよ。いわば大阪が本家です。

福岡公演が行われたのはキャナルシティ博多の中にある「キャナルシティ劇場」ですが、ココにはかつてカネボウプールがあり、さらに前にはカネボウ福岡工場があったそうです。
http://adv.yomiuri.co.jp/ojo/02number/200401/01kigyo.html
名前の通り、敷地内にはキャナル(運河)が流れていますが、すぐ横には那珂川も流れているし、かの有名な中洲もすぐ側です。要するに川の側ってコトですね。工場と言えば川の側。カネボウの本拠であった墨田区鐘ヶ淵も隅田川と荒川に挟まれた土地です。カネボウって「鐘ヶ淵紡績」の略ですよ。
実際、福岡市中心部はかつてほとんど海だったことが古地図でも証明されています。こちらのサイトが分かり易いのではないでしょうか。
http://y-ta.net/fukuoka-kamakura/
つまり、福岡城址とJR博多駅に挟まれたエリアは中世まで海だったと。現在は福岡市街の中心部にある住吉神社にもこんな古地図の複写がありました。上下逆さまにご覧下さい。クリックで大きくなりますよ。


長浜は細長い浜だから長浜なんですね。いや、それは別の話だ。大阪にも住吉大社がありますが、全国にある住吉神社は住吉三神を祀っており、海や航海の安全を司る神様なのです。「すみよし」とも「すみのえ」とも読みますが、海を祀る神社です。そして、大抵は海沿いに建てられていました。博多の住吉神社も大阪の住吉大社も今では内陸部ですが、かつては海に面して建てられていたのです。


さて、ここで私が問題にしたいのは「劇場と川の関係」です。私の個人的な調査によれば、日本にある劇場の半分は川沿い、もしくはかつて川があった場所沿いに建てられているのです。ちなみに残りの1/4は大名屋敷地の跡である高地に、残りの1/4はそれらと全く関係なく企業の都合で建てられています。こちらはまたいずれ書きたいと思いますが、とにかく劇場は川の側に建てられるコトが多いのです。
かつて、俳優は「河原者」と言われていた時期がありました。河原は無界の場所であり、芸能や商業の場所であった名残から、繁華街は川の側にあることが多く、それが劇場と川の関係になっているという説があります。網野善彦さんや中沢新一さんもその説ですね。だからこそ、人が集まる劇場は川の側に多いのです。

キャナルシティ劇場は先ほど書いたように那珂川の東。そしてサンシャイン劇場は、今は暗渠となっている水窪川の北。水窪川は東急ハンズ裏の美久仁小路を水源に護国寺を回り込んで神田川に注いでいました。
サンケイブリーゼホールは近所の「桜橋」や「出入橋」という地名の通りかつては曽根崎川(蜆川)と呼ばれた淀川の支流北側に建っています。蜆川は新地を突っ切って流れていました。その辺りは昔からの繁華街です。
ほら、三劇場とも川の横でしょ。

さて、残りの二劇場と川との関係が気になるトコロですが、今回はココまで。最後に、ブリーゼタワーの写真を載せておきましょう。




どう、この作り物感。いや、建築ですから作り物なんですけど、なんかCGっぽい。最近の美麗なゲームの建物っぽい。一切加工せずにこの感じなのですよ。あまりに面白いのでちょっと大きく載せちゃいました。甘栗むいちゃいました。

2013/11/11

「ショーシャンクの空に」東京公演終了

序盤には色々問題もありました公演でしたが、なんとか東京の千秋楽を無事に終えました。この後、大阪福岡名古屋松本と四都市を回ります。
ご来場頂きました皆様、ありがとうございました。そして、この後四都市でご覧頂きます皆様、どうぞお楽しみに。
小説とも映画ともちょっと違う、新しいショーシャンクの世界を作れていると思います。特に主演御二人の好演に刮目して下さい!

ところで、この東京公演が行われたのは池袋サンシャイン劇場。この劇場があるサンシャインシティはかつてスガモプリズンで有名な「巣鴨拘置所」のあった場所。刑務所のあった場所で刑務所が舞台の公演を打つ。色々と思うこともありますが、なにやら因縁めいたことも感じますね。
とにかく、残りの四都市公演も全力で頑張りますので、どうぞよろしくお願い致します!

2013/10/31

地テシ:049 そろそろ「ショーシャンクの空に」開幕ですよ

すみません、お久しぶりです。ずいぶんと更新を怠っていました。気がついたら「真田十勇士」が終わって一ヶ月くらい経ちましたね。まあ大変でした。稽古開始の頃から比べて体重が5kgくらい減ったり体脂肪率が11%になったりした大変な現場でした。大変だったけど楽しかったなあ。おかげさまで好評のようでよかったですよ。

その間に世の中は色々と変わっていました。iPhone5sと5cが発売されたり、iPad Airが発表されたり。他にも色々あったような気がしますが、ありすぎて忘れちゃいましたね。とりあえず私は元気です。

さて、そんな私は、また楽しい現場にいますよ。それは舞台「ショーシャンクの空に」です。あの名作映画の原作であるスティーブン・キングの「刑務所のリタ・ヘイワース」の舞台化です。ややこしいね。つまり小説の舞台化なのですが、映画的要素も取り込み、最終的に小説とも映画ともちょっと違う物が出来上がりました。舞台ならではの表現も盛りだくさんで、結論としてなんだか面白いモノが出来上がりそうです。
さすがの喜安脚本に河原演出です。清冽でありながら猥雑、シンプルでありながらダイナミック。通し稽古を見ながら、これはなんだか面白いモノになるんじゃないかな、と思ったワケです。

とりあえず、小説を読んだ方も、映画を見た方も、それを忘れて見て頂けたらと思います。話の骨格は全く同じなのですが、ずいぶん違ったモノになりそうです。ただ、上演時間はそこそこ長くなりそうです。

そんなこんなの昨今、暑い夏もいつの間にか秋になり、そう遠くないうちに冬になりますが、私は今年の防寒用具としてこんなモノを買っちゃいました。


ええと、小さなフトンですね。これは何かと申しますと、防寒マウスパッドです。え? これがマウスパッド? そうなんです。寒い日には暖房を入れていても手足の先がかじかみますよね。足はまあ、電気アンカや防寒スリッパなどでも暖かくなりますが、手先は無防備です。もちろん手袋をしても良いのですが、日々PCで文字を打ったりマウスを動かしたりする生活だと、手袋だと邪魔になります。特にマウスを操作する右手が寒いんですよ。
そんな時にはコレ!

http://www.thanko.jp/product/2740.html

掛け布団の部分にUSB電源のヒーターが入っていて、ひえひえの右手を温めてくれる! らしいのです。まだ使ってないから判らないけど。ちなみに、枕っぽいパーツはアームレストとして使うそうです。正直、半ば冗談で買ったのですが、もしもこれで快適な冬PCライフが送れたら凄いなって思います。とりあえず、カワイイから、いいか。

2013/08/31

真田十勇士 開幕 しました!

ええと、そんなワケで一夜明けて「真田十勇士」(TBS版ね)の初日が無事に幕を開けました。無事で何より。大きなミスもなく、怪我もなく。そしてなんだかお客様には大変ご満足頂けたようでした。これも何より。
まだまだ始まったばかりですから、気をつけていきたいと思います。

しかし、上川隆也くんとはもう二十年以上のつきあいですが、やはりさすがですよ。存在感も説得力も、まさに幸村がそこにいるような圧力です。
さらに、今回が初共演ですが、柳下大くんの身体能力と潜在能力! 素直で素朴で素敵な青年で、舌を巻くことしきりです。いやあ、まだまだ知らない逸材はたくさんいるんですねえ。
そしてもちろん里見浩太朗さん! 圧巻の徳川家康です。

このお三方の男ぶりを見に来るだけでも価値があるこの作品。9/16まで赤坂ACTシアターにて上演致しますので、是非ともお見逃しなく!

あ、私もそこそこ闘ってますよ。

2013/08/30

真田十勇士 開幕!

さあて、いよいよ「真田十勇士」が開幕しますよ!
なんとか無事に進んでおりますので、このまま無事に開幕したいモノですが、それ以外にも個人的には「パシフィック・リム」を見たとか「ジョジョASB」が届いたとか色々書きたいネタは有りますので、それについても近いうちに。
ていうか、こんな日に限ってPSNメンテで入れねえ!

2013/08/06

今度はショーシャンクの空にの予習

なんだか舞台の宣伝ばかりになって恐縮ですが、「真田十勇士」の後、秋に上演される舞台「ショーシャンクの空に」関係の告知をば。

まず、公式ページが正式にオープンしました!

まだまだ情報は少ないですが、全キャストの写真なども載っていまして、実に想像力そそられる内容となっております。
上演は10月から11月なのでまだまだ先の話ですが、どうぞご期待下さい。


そして、演出の河原雅彦さんのインタビューが掲載されている「げきぴあ」さんのページもリンクしておきますね。

今作は「ショーシャンクの空に」というタイトルになっておりますが、映画版の舞台化ではなく、原作小説であるスティーヴン・キング「刑務所のリタ・ヘイワース」の舞台化であります。物語の骨子は全く同じモノではありますが、映画化に当たって監督であり脚本も手がけたフランク・ダラボンによって独自の脚色がなされております。つまり、小説を映画化するにあたって効果的な脚色がなされているというコトです。そういった事情が書かれているリンク先ですよ。

実際、私の周りに居る映画版が好きな人々の感想を聞くと、印象に残っているシーンは映画用に脚色されたシーンが挙げられるのですね。私自身もそうでした。原作にはなく、映画版で付け足されたシーンが効果的に効いているというコトです。

しかし! 舞台版では舞台に適した脚色がなされていて、これまた効果的に効いてくるはずです。そのあたりは実際に上演してみなければ判りませんが、 映画版しかご存じない方には、是非とも原作小説をお読み頂くことをオススメします。同時収録の「ゴールデンボーイ」も底怖ろしくなる名作ですから。新潮文庫「ゴールデンボーイ 恐怖の四季 春夏編」をどうぞよろしくお願い致します。

 ゴールデンボーイ―恐怖の四季 春夏編 (新潮文庫)

といった宣伝でした。まあ、 まだまだ先の話ですがね。とりあえず、私は今は「真田十勇士」に全力投球しますよ!

2013/08/04

また真田十勇士の予習

昨日、舞台「真田十勇士」の予習用書籍をご紹介したところですが、もう一冊見つけました。ていうかおなじみ「シアターガイド」ですが。

8/2に発売された「シアターガイド 9月号(vol.259)」の特集は「真田十勇士」。上川隆也さんや里見浩太朗さんのインタビューや、中島かずきさん×宮田慶子さんの対談や稽古場レポートも載っています。私の写真も一枚だけ載っていましたよ。

それと、今日8/4の朝11時からBS-TBSにて「名将! 真田幸村の故郷を訪ねて〜上川隆也と真田十勇士〜」という番組が放送されるそうです。私はもう稽古場に向かう頃なので見ることはできませんが、録画しておこうと思います。直前の告知になってしまってすみませんです。
BSをご覧頂ける方はちょっと見てみて下さいませ。 私も時間差で見ておこうと思いますよ!

2013/08/03

真田十勇士の予習

ええと、現在「真田十勇士」の稽古中でして、なんだか忙しくて更新が滞っておりますが皆様いかがお過ごしでしょうか。暑い日々が続いておりまして、そちらも色々と大変だと思いますが、どうぞご自愛下さいませ。
こちらは「空想組曲」のゲスト出演も無事に終わり(面白い舞台でしたね!)、ミロクル通信の連載も更新されたりしております。そして元気に「真田十勇士」の稽古に励んでおりますよ!

さて、そんな「真田十勇士」ですが、ご観劇に向けての予習といいますか、真田幸村と十勇士に関して最適な解説本が出たのでご報告致します。
それは晋遊社の「晋遊社ムック 歴史探訪シリーズ 天下人・家康が、最も恐れた男ー 闘将 真田幸村」です。

真田幸村について判りやすく解説している上に、まるで今舞台のタイアップではないかと思われるくらい舞台版「真田十勇士」を取りあえげて頂いております。なにしろ、表紙からして上川隆也さん扮する真田幸村ですし、巻頭特集として中島かずきさんのインタビューまで載っています。
幸村や十勇士のコトをあまりご存じでない方には最もオススメの解説本です。7月末の発売ですので今なら大きめの書店にてお買い求め頂けると思います。
まあ、これを読んだからといって舞台が格段に面白くなるというワケではありませんが、時代背景などを予習するにはもってこいだと思われますので、どうぞお手にとって頂ければ幸いです。

2013/07/13

行きにくい劇場の良作

どーもどーも、気がついたら「ママと僕たち」公演も「仮面ライダー ウィザード」オンエアも無事に終わっていた私です。ご来場頂いた皆様やテレビを見て下さった皆様、ありがとうございました。私は今「真田十勇士」の殺陣稽古で汗だくへとへとで頑張っていますよ!

さて、そんな中、時間があれば色々と舞台も見に行っているのですが、ちょっと行きにくい劇場での良作を続けて見ましたのでご報告をしたいと思います。


まずは演劇集団キャラメルボックス「ジャングル・ジャンクション」。北千住駅前にあるシアター1010で上演中でして、今日が初日であと三日で終わってしまうという短いスケジュールなのですが、小劇場ならではの身体を使った痛快な作品です。しかも「男組」と「女組」の2チーム交代公演というハードなスケジュール。
事務所の後輩でもある劇団鹿殺しの菜月チョビさん、丸尾丸一郎さん、オレノグラフィティさんの三人もご出演でして、みんな頑張っていますよ。小難しいことはなしで、元々劇団ショーマの作品を懐かしのジェットコースター演劇で表現しています。
北千住駅という、関東西側にお住まいの人々にはちょっと馴染みのない場所で、しかも北千住のどこにあるのか判りにくい劇場での公演ですので場合によっては行きにくいかもしれません。しかし、その価値はある公演ですのでお近くの方はぜひ。なお、シアター1010は駅前の○Iの11階にありますからね。エレベーターが混むから早めの到着を心がけて下さい。


もう一つは空想組曲「組曲『空想』」。ショートストーリー連作の作品でして、サスペンスありギャグありシリアスありのバラエティアソートみたいな作品です。しかし、一見ばらばらな短編が、ラストにはキッチリ繋がっていくという見事な作品。しかも笑えて泣けてスッキリして、実に爽快な作品です。
しかも、一ヶ月ロングランの中、数日ごとにゲストを交えての短編も混じってくるという贅沢さ。そして、そのF日程と呼ばれる7/23〜25の日程に、私もゲストとして参加します! 平沼紀久さんとゆるいコントします。
なんか自分の出る作品の宣伝みたいになっていますが、そういうワケではありません。私が出ている出ていない関係なく、ぜひ皆様にも見て頂きたい作品なのです。

劇場は中落合辺りにあるシアター風姿花伝。これがまた行きにくい場所でして、西武新宿線下落合駅からも西武池袋線椎名町駅からも歩いて10分程掛かる場所。JR目白駅からは歩けば20分程掛かりますが、駅前からひっきり無しにバスが出ていますからこちらが便利かも。詳しくはこちら。

行ってみたら案外行きやすかったですよ。

そんなこんなの、行きにくい劇場での良作二本。他にも今ならナイロン100℃の「わが闇」とかおにぎり「トークトワミー」とか行きやすい良作もありますが、たまには行きにくい劇場にも足を延ばしてみるのはいかがでしょうか!

2013/06/25

地テシ:048 またしても東京地形話

六月上旬はデジタル関係の新発表が多くて追いきれないほどでしたね。無理矢理まとめますと、Xbox Oneが11月発売! PS4はまさかの菱形筐体! 新しいMacProはまさかの黒い円筒形! 新しいMac OSXであるMavericks発表! 新しいiOSであるiOS7発表! 新MacBook Airにはhaswell搭載! といった感じです。総合的に今年の秋から冬には色々変化があるってコトでしょうか。秋が待ち遠しい! とか思いますが、私は舞台が忙しすぎて待ち遠し感すら味わう暇もなさそうですよ。なお、なぜ今更六月上旬の話を書いているのかと申しますと、今号のネタはずーっと書きかけの記事だったってコトですね。


さて、最近地図ネタっぽいのが続いていますが大丈夫ですか? ていうか、このBlogは大体そんな内容ですから大丈夫でしょうが。そして、今回もそんな内容です。

私の興味は「何故そこに道がひかれているのか、何故そこに線路が敷かれているのか、何故そこに駅があるのか」という、交通と地勢学との関係性にあるという話は以前にも書きました。そして、ここ最近にそれらについて解説していてくれる面白い本が立て続きに出版されていたのです。
なので、今回はそれらを紹介しつつ、関東における交通と地形との関係を少々解説したいと思います。



中央線がなかったら 見えてくる東京の古層
中央線がなかったら 見えてくる東京の古層

まずは「中央線がなかったら 見えてくる東京の古層」(陣内秀信・三浦展 編著/NTT出版)。これはもう、タイトルからして私の興味にドンピシャな本です。要するに、鉄道がなかった頃の東京の西郊はこのように発展していたんだよ、という話です。
古代から近世までの三多摩地区には律令官道、鎌倉街道、江戸街道などが敷かれており、消えてしまった道も多いのですが、中には現在にも生活道路として生きているケースも多いのです。そして、鉄道も街道に沿って作られたモノが多い。京王線は甲州街道にほぼ沿っているし、地下鉄丸ノ内線(と昔の都電)は青梅街道に沿っています。つまり昔からの町を縫うようにして走っています。
しかし、中央線は地形も町も関係なく真っ直ぐに武蔵野台地を東西に通っています。用地買収をしやすくするためにワザと何もないところを通したのですね。そしていくつか駅ができ、そこに町ができる。するとそれらを繋ぐ道もできる。

つまり、中央線ができたことによって武蔵野の町も道も一新され、それによって生活も変化していったのです。それらの町と道、そして中央線を消してみると、七世紀から十九世紀の長きにわたる武蔵野の人々の生活が見えてくるというワケです。

特に陣内さん、三浦さんによる巻頭対談が素晴らしい。概論として、この本に書かれていることが総括されています。その後は中野・高円寺・阿佐ヶ谷などの各論が述べられ、実際に古街道を歩きながら検証していてとても面白いのですが、あまり興味のない方には判りにくいかもしれません。



新宿学
新宿学

次は「新宿学」(戸沼幸市編著、青柳幸人・髙橋和雄・松本泰生著/紀伊國屋書店)。何やら難しそうなタイトルですが、確かに専門的で少々堅めの文章です。しかし、新宿の地勢学から江戸時代の内藤新宿、近代の新宿駅の発展を丁寧に解説しながら、その歴史と未来図を探求しています。元々は早稲田大学オープンカレッジの講義をベースとしたものらしく、学術的にも確かな内容です。
とにかく、コレを読めば新宿の、特に新宿駅近辺の歴史が全て判るというシロモノですよ。一日350万人が乗降するという、世界最大のターミナル駅の発展の過程が詰まっています。

そもそも現在の新宿エリアは、中世までは特に大きな町ではなかったようです。しかし、江戸時代に甲州街道と青梅街道、そしてその分岐点である新宿追分ができて人馬の往来が激しくなり、さらに江戸初期に「内藤新宿」と呼ばれる新しい宿場町ができると一気に町が大きくなります。
そして明治十八年に現在で言うところの山手線新宿駅ができますが、町外れにできたためにほとんど利用者がなかったってのも面白い話です。今では考えられないでしょ。

その後、中央線、都電、京王線、小田急線、地下鉄丸ノ内線・新宿線・大江戸線と、乗り入れる鉄道が増えるたびにターミナルが巨大化し、現在のようなモンスターターミナルとなったのです。まさに鉄道が町を作ったのです。


迷い迷って渋谷駅 日本一の「迷宮ターミナル」の謎を解く
迷い迷って渋谷駅 日本一の「迷宮ターミナル」の謎を解く

最後に「迷い迷って渋谷 日本一の「迷宮ターミナル」の謎を解く」(田村圭介著/光文社)。タイトル通り迷宮のような渋谷駅が何故できたのかが時代を追って丁寧に解説されています。もちろん鉄道駅ができる前の古代から近世に至るまでの渋谷についても語られています。
ええと、たしかそんな内容でした。いや、この稿を書くに当たって読み返そうと思ったのに見当たらないのですよ。多分家のどこかにはあるのだと思いますが、何しろとっちらかっているモノでして。多分大掃除をしたら出てきます。なので、本書の内容と言うよりは、著者と田村研について書いてみたいと思います。

昭和女子大准教授である著者は、ゼミである田村研究室のメンバー・学生と共に渋谷のグランドデザインを研究し、その成果を書籍だけでなく、渋谷各所にて催されるイベントなどでも披露しています。
今年の春に観たのは、ヒカリエの4階に展示されていた田村研による「ダンボール製の渋谷」でした。5m×5mほどのダンボール製の地面。しかも、ちゃんと素の地面の起伏も再現されています。その上にダンボール箱を積み重ねた渋谷のビル群が建ち並びます。

ただし、あくまで簡易な概念図ですので、リアルに再現されているワケではなく、イメージとしてのジオラマでしたけど。しかし、ミニチュアというには大きすぎる、迫力のあるディオラマでした。


以上、三冊の、今年になってから刊行された「東京西部における土地と鉄道駅との関係性」を丁寧に描いた書籍でした。もうね、この手の本は最近どんどん刊行されていますから、その中から個人的に面白い本を見つけ出して読むのが大変なんです。いや、嬉しいんですけどね。



さあ、そんな感じの六月。現在「ママと僕たち」上演中です。
http://www.nelke.co.jp/stage/mamaboku/

それと、「仮面ライダー ウィザード」出演中です。
http://www.tv-asahi.co.jp/wizard/
来週6/30にも出ていますからお見逃しなく!

じゃ、日曜朝八時に、テレビ朝日で僕と握手!

2013/06/19

ママと僕たちと僕

さあ、今週末6/21からは渋谷のアイアシアタートーキョーにて「ママと僕たち」の幕が開きますよ!

イケメンと小劇場と歌のお兄さんがコラボする謎の舞台。でも、なかなかポップで面白い作品に仕上がっていると思います。日によってはまだチケットも残っているそうですので、気になる方は是非お越し下さい。
渋谷から公園通りを上りきった正面、NHKの右側にある劇場ですよ。以前はマッスルミュージカルが上演されていた劇場と言った方が判りやすいかもしれません。実は原宿駅の方がちょっと近いんですけどね。

そんなこんなでまた渋谷に通う日々が始まります。今書いているコンテンツも渋谷駅とかそういうターミナル駅についての内容ですので、そちらもお楽しみに。ていうか、ずっと前から書いているんだけど、稽古が始まったらパッタリ停まっちゃったのね。

トーキョーは急に暑くなってきましたが、皆様も体調にはお気をつけて下さい。じゃ、また。

2013/06/10

地テシ:047 2013後半の私

そろそろ夏。徐々に暑くなっていく気温が嬉しくもあり悲しくもあり、といった日々ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。私は暑いのは苦手なのでどちらかというと悲しい日々です。

さて、この6月下旬にはネルケプランニング「ママと僕たち」
http://www.nelke.co.jp/stage/mamaboku/
が上演予定でして、現在その稽古にバタバタと取り組んでおります。日によってはまだチケットがある日もあるとのことです。テニミュキャストの多いカンパニーですが、タダのイケメン芝居に収まらないアグレッシブな作品になりそうですよ。気になっている方は、是非!


そして、その後の今年の冬までの仕事情報が出そろいましたのでサクッとまとめてみたいと思います。

まずは映像出演のお知らせです。
テレビ朝日「仮面ライダーウィザード」の再来週6/23(日)の第40話と再々来週6/30(日)の第41話にちょっとずつ出演しています。予告編には出ていませんが、出ているはずです。
ここ二話、池田成志さんもカッコよくご出演なさっていますが、それと相まって次回と次々回は小劇場風の空気になるかもしれません。一緒のシーンは無いけど。
ただ、役柄については私は言ってはいけないらしいので、出るとだけご報告しておきます。どうしても知りたい方は、東映株式会社さまのHPでいろいろ探して頂きますとなにか情報があるかもしれません。
なお、来週6/16は全米オープンゴルフのため「ウィザード」はお休みです。オンエアは再来週と再々来週ですからお間違いなく。


舞台では夏の「真田十勇士」
http://www.sanadajuyushi.com

に続いて秋の「ショーシャンクの空に」舞台版が発表されました。
http://shawshank-stage.jp

演出はお馴染みの河原雅彦リーダー、脚本は「桐島、部活やめるってよ」で日本アカデミーショー優秀脚本賞を取ったことで話題の喜安浩平さんが担当することでなんだか話題になってしまいましたね。喜安さんは映画脚本家として以外にも、劇団・ブルドッキングヘッドロックの戯曲・出演や劇団NYLON100℃の劇団員としても精力的に活動なさっていますね。ブルドッキング〜の最近作「少し静かに」は今年前半期出色の面白さでした。演出は、先日私も出演した「サイレント・フェスタ」にも出演なさっていた西山宏幸さんです。なんかこうして少しずつ自分の周りの世界が拓けていくのは楽しいですね。
ちなみに、今年前半期で個人的に一番の面白さだったのは池田成志先輩もご出演なさっていたイキウメ「獣の柱 まとめ*図書館的人生(下)」です。魅せるし笑わせるし考えさせられるし、SF好きのみならず全方位に納得させられる傑作でした。見ながら心揺さぶられる感覚を味わいました。

そんなこんなの今年後半。自分が出る舞台でも全力を尽くして面白くしたいけど、見に行く芝居でも面白い作品に出会いたい。そんな気持ちは皆様にもお判り頂けると思っております。どうせならワクワク過ごしたいじゃない! そんなワクワクをお届けできるように私も頑張りたいと思います!

2013/05/20

地テシ:046 忍城と石田堤

5/17オンエアのテレビ朝日「タモリ倶楽部」では人見街道や品川道などの関東古道が紹介されていましたね。
しまった! 私も最近では江戸街道に加え、鎌倉街道や律令官道にも興味が向いてきていたトコロだったのですよ。なので関東近辺の鎌倉街道を探しては歩くという日々だったのです。
しかもゲストが荻窪圭さん! そしてチラッと出てきた芳賀善次郎さんの著作! 元ネタが全部同じだ! ええと、その辺についてもまた近いうちに書きたいと思います。


さて先日、仕事の関係で埼玉県の奥、秩父の方に行ってきました。しかし、仕事は午前中で終わり。昼頃に最寄りの駅まで送って頂きましたが、さてどうしたものかと考えながら、最近見たある映画のことを思い出していました。

のぼうの城 通常版 [Blu-ray]
 
その映画は「のぼうの城」。そう、犬童一心さんと樋口真嗣さんのダブル監督で制作された、五月上旬のTSUTAYAレンタル順位一位で話題となっている、昨年公開の邦画です。

近年の邦画として色々と記録を打ち立てたり賞を取ったりしていたようで、気にはなっていたのです。もちろん見るつもりだったのです。樋口監督にもスクリーンで見ますと言っていたのに、公開していたのは昨年末。丁度「五右衛門ロック3」の稽古から本番という忙しい時期。結局劇場では見られませんでした。
そんな経緯があったもので、先日やっとBDを買って拝見しました。ちゃんと買いましたよ! 樋口監督!
そしたら! やっぱり面白くて、劇場で見なかったことを後悔しました。邦画にしては近年稀に見るスケール感、そして泥臭さ。特撮・CGの素晴らしさは言うまでもなく、史実に基づくストーリーの面白さもさることながら、俳優陣の生き生きとした演技も印象的でした。
そして、この映画のもう一方の主役といえるのが舞台となった「忍城」ではないでしょうか。天下統一を目前にした豊臣秀吉が最後の敵である北条氏を包囲した小田原征伐において、唯一落とすことのできなかった忍城攻防戦を描いたこの映画。題材としてはまさにこの一点に集中した作品ですが、それを巡る敵味方武士農民をひっくるめた人々の心理を丁寧に痛快に描いた快作です。
その舞台である忍城、行田市、水攻めのための堤。それらの土地の描写が秀逸で、それが故に土地そのものが主役となり得る作品だったと思うのです。実際のロケはほとんど北海道だったそうですが。

そんなコトを思い出しながら、埼玉奥地で放り出された正午。まだ時間はたっぷりあります。だもんで、最寄りの駅から秩父鉄道行田市駅を目指すことにしました。いや、よくあるんですよ、ドラマ撮影後の現地解散。ロケバスに乗ってスタジオに帰るのが大半なのですが、撮影半ばで出番が終わった場合、現地最寄りの鉄道駅で解放されるコトも多いのです。大好きです、現地解放。むしろ願ったりです。これ幸いと観光して帰りますから。


さあ、そうと決まれば行田市駅を目指しましょう。とはいえ、本数の少ない秩父鉄道ですから注意は必要です。単線の秩父鉄道に揺られながら到着しました行田市駅。現在は行田市ですが、かつての忍藩、廃藩置県の明治四年には三ヶ月だけ忍県となった土地です。ここ行田市駅前には市役所などの行政の中心と共に「忍城址」があります。歴史の古い街だけあって、全国一位を誇る足袋生産地などの地場産業もありますが、「のぼうの城」公開後は観光地としての忍城が重要になっているようです。
では、駅前から忍城を目指しましょう。といっても歩いても10分ほどで着く近場です。途中には土蔵や案内板や石碑が整備されていて、実に丁寧に観光案内がされています。
駅の南西方面にある市役所裏に忍城址はあります。

そこに至るまでに歩いて判るのですが、実に真っ平ら! 利根川と荒川に挟まれた扇状地ですから本当に真っ平らなのです。それが故に沼や堀を要害とした水城です。平城には海を一方とした水城が多いのですが、これほどグルリと周りを平野で囲まれた平城は松本城とこの忍城以外を知りません。知らないだけでしょうが。いやもう、平らさに関しては日本一かもしれません。勝手に決めましたけど。だからこそ「忍の浮城」とまで言われるのでしょう。




裏手の駐車場辺りのひときわ高く土塁が積まれていているのが本丸跡。


この上には現在行田変電所があります。各櫓などとは橋で繋がれていたそうで、その間は水堀。本当に水に浮かぶ飛び石のようなポツンポツンとした城だったようです。
現在は再建された「御三階櫓(天守代わりに使用された)」が唯一城っぽい風情を醸し出しています。敷地内には「行田市郷土博物館」があったり、少し南には堀跡を利用した「水城公園」があったりするのですが、今日は行きません。他に行きたいところがあるから!




もちろん行田市最大の歴史遺産と言えば「さきたま古墳群」。埼玉県の名前の元ともなったエリアですが、こちらにも行きません。他に行きたいところがあるから!


その行きたかったところというのがこちら。














ええと、なんでしょうか。やけに幅のある中央分離帯でしょうか。ただの田舎道のようにも見えますが、この土手のようなモノの正体はこちらです。


















石田堤? それはなんじゃろうとお思いになるあなたには是非「のぼうの城」をご覧頂きたい。忍城攻めの総大将は石田三成。その三成が水攻めをするために全長14kmとも28kmとも言われている人工堤防を築いたのですが、その現存する一部がこの「石田堤」なのですよ!
ちなみに右側の黒っぽい石碑が碑の本体ですよ。慶応二年に名主増田五左衛門が建立したモノだそうですが、字はほとんど削れて読めません。江戸末期には既に堤が壊されて消えつつあったようです。
場所はこの辺り。



緑の矢印の方ね。さすがに行田市駅からは距離が離れすぎていたのでタクシーで向かいましたが、その運転手さんに連れて行かれた場所がこちら。

こんなのがあるんですね。一応観光名所にはなっているようです。とはいえ、言われなければただの土手に見えてしまうのではないでしょうか。
それもそのはず、石田堤は何もないところから築いた訳ではなく、既存の土手や微高地を繋いで数m盛り足しただけだそうで、それがゆえに一週間ほどでできたのだそうです(実際にはもっと工期は長かったようですが)。

ここから堤沿いに南へ行き、忍川を渡った鴻巣市側に行きますと、なにやらもっと整備された公園があります。これが「石田堤史跡公園」。そこにはこんなパネルが埋め込まれていました。

カラフルな数本の線は道を示しているだけで石田堤を表している訳では無いことにご注意を。ここでは水田広がる真っ平らな行田市が見て取れればOKです。
その左下の地図が石田堤の図。こちらを拡大して読みやすくしてみましょう。



こちらは清水雪翁が大正二年に描いた「石田堤現存図」。大正になるとさらに堤は削られていったようです。さすがに見にくかったので、描かれている石田堤を緑色で書き足してみました。
今、私が居るのは右下の大きく張り出している辺り、堤根村と呼ばれていた土地です。地図からも判る通りココが最下流となり、この辺りに水が溜まってしまって忍城は大して水没しなかったそうです。そして、堤防が決壊したのもこの辺りと言われています。



現在では約300m程しか残されていませんが、鴻巣市の石田堤史跡公園にはかなり綺麗な形で残されています。


手前の白壁部分は断面図。ガラス部分は断面を直接見ることができます。復元ですけど。ちなみにこの上を上越新幹線の線路が通っています。
その高架下にはこんな絵も飾られていました。






三成が本陣とした丸墓山古墳(さきたま古墳群にあります)から見た水攻めの想像図ですね。まさに映画で見た通りです。なお「大一大万大吉」は三成の旗印です。














しかし!
ここで私は言いたい!
本当に三成は水攻めがしたかったのか、と。

石田三成は内政のみが得意で戦下手だという評価が固定しています。「のぼうの城」でも三成自身がそう言っています。確かにほとんど実戦経験はありませんでしたから、戦は得意ではなかったでしょう。しかし、それにしても忍城を水攻めにしようと発想するのは無理があります。

「五右衛門ロック3」で石田三成を演じるに当たって読んだ参考資料に「石田三成からの手紙」(中井俊一郎著・サンライズ出版)があります。この中に紹介されているエピソードとして、忍城攻めに向かった三成から上司宛に「諸将が水攻めを決め込んでいて攻め込まなくて困る」と書状を出し、後日秀吉から三成に「水攻めが上手くいったら私に見せるように」との書状が送られていることが検証されています。
これらから、三成は水攻めなどせずに力押しにした方がいいと思っていること、そして秀吉は備中高松城の水攻めを再現して坂東武者に力を見せつけたかっただけではないかということ、などが推察されています。
要するに、水攻めは秀吉の命令で、三成はしぶしぶその指示に従ったのだという可能性があるのです。
実際に現地を見てみて、あまりの真っ平らさ加減に水攻めの無謀さが痛感されました。すぐ横を山に囲まれた備中高松城とは状況が違いすぎます。これでは水を溜める範囲が大きすぎて効果がないだろう事は簡単に推察されます。

三成は秀吉の命に従い無理を承知で水攻めを決行し、やっぱり無理で忍城攻めに失敗したのではないか。あえて汚名を着たのではないか。そんな気がしてならないのです。それは、三成びいきの引き倒しかもしれませんがね。

石田堤史跡公園の南方で、現存堤はふっつりと切れていました。かつては農地に、現在は住宅地としてほとんどの堤は削られてしまったのでしょう。
堤が途切れた先の農地ではネギが栽培されていました。

近所名産の深谷ネギかもしれません。
そういえば深谷近所の寄居サービスエリアには深谷ネギラーメンがあるそうですね。そりゃ旨いに決まってるよ! 食べてみたいものです。
ちなみに、石田堤史跡公園に行くだけなら、秩父電鉄行田市駅よりもJR高崎線吹上駅か北鴻巣駅の方が近いですよ。私も帰りはこちらを利用しました。



そんなこんなの埼玉探訪記。「のぼうの城」のディスク発売は5/2でして、現地でもこれを機に観光気分が再燃しているようです。たまたまではありますがタイムリーに行田市を訪れることができてラッキーでした。「のぼうの城」未見の方は是非一度ご鑑賞を!

2013/05/16

地テシ:045 春の美術展のその周り

さて、前回は三月に行った美術展の話を書きましたが、美術館に行ったついでに近所を散策してみましたよ。ていうか、近所施設も目的の一つでした。

まずは「かわいい江戸絵画」を見に行った府中市美術館。京王線府中駅北東の都立府中の森公園内にあります。地図はこちら。


大きな地図で見る

府中駅から北東を目指しますが、時あたかも三月。桜の美しい季節です。府中駅から府中警察署横の桜通りを北上し、中央文化センター前で右折して東へ行くと桜並木を満喫できます。できますっていうか漫喫したんですけど、それを五月に報告されてもどうしようもないですね。まったくもってその通りです。来年頑張って下さい。
突き当たりを左折し小金井街道を北東に進むと府中の森公園。その北端に美術館はありますが、わざわざ歩かなくてもバスも出ていますよ。

「かわいい江戸絵画」展を堪能した後、小金井街道を更に北上します。え? 駅から離れていかない? そうですね。遠くなりますが、今日行きたいのは府中の森公園の北隣にある「航空自衛隊府中基地跡地」。ここは府中トロポサイトとして有名な旧「米空軍府中通信施設」があったところです。あったというか、書類上では今でも運用中だそうですが、完全に廃墟です。戦前戦中は陸軍燃料廠だったそうです。
で、その敷地内に巨大なパラボラアンテナが二基取り残されている、という噂を居酒屋の後ろに居たカップルから聞かされたのはもう三年前の夏。いや、なんでそんな流れになったのかはややこしいので書きませんが、とにかくいつか確認しに行こうと決意していたのでした。

というワケで、こちらがそのパラボラアンテナ。














敷地内の建物は、ほら、廃墟でしょ。














うん、これが確認できただけで満足です。北側から見やすいのですが、周りは民家なのでご配慮を。


ここから府中駅前に戻って、今度は南の大國魂神社を目指します。武蔵総社であることと、例大祭である「くらやみ祭」、けやき並木で有名な、鎮座1900年を誇る歴史のある神社です。府中という名が示す通り、この地は武蔵国の国衙があった中心地であり、とにかく東京で一番歴史の長いエリアなのです。
時間も遅かったので拝殿には詣れませんでしたが、こちらが拝殿前の中雀門。














そしてその前にあったしだれ桜。


















それから、神社横にあった武蔵国府跡。














神社前を走る旧甲州街道沿いにある、高札場。














府中駅のそばにあり、夕方の帰社時間だったせいか境内を抜けて帰宅する人々も多かったのですが、拝殿前を通過する方々が拝殿に向かって一礼してから歩いているのが印象的でした。地元に根付いているのですね。


さて、では今度は国立新美術館の話をしましょう。こちらでは「カリフォルニア・デザイン1930-1965 "モダン・リヴィングの起源"」を楽しんだのですが、この美術館が面白いのはその立地。ここにはかつて東京大学生産技術研究所があり、その建物は歩兵第三連隊兵舎だったのです。そう、二・二六事件に多数参加したことで有名な連隊ですね。
国立新美術館はその兵舎跡に建てられているのですが、兵舎の一部が別館として保存されているのです。


















本当に一部だけですのでよく判らないと思います。
なお、美術館内にはその兵舎の模型が展示されており、撮影可だったので撮っておきました。














このちょっと変わった形の建物が兵舎。この形のまま、東大研究所として使われていました。
現在の国立新美術館はガラス張りのモダンな建築ですが、その前にはこんな無骨な建物が建っていたんですね。
ちなみに江戸時代のこの敷地は宇和島藩伊達家の屋敷があったようです。


そんなこんなの美術館巡りを利用した散策。偶然ではありますが、どちらも軍関係の建物でした。いや、本当に偶然なのですが。軍関係地は広大な敷地が必要なので、その前に建っていたモノ(大名屋敷とか)も、その後に建ったモノ(公園や学校とか)も、どちらも興味が沸きやすい土地なんですよ。

さて、こんな感じで色んな場所に出掛けている私ですが、先日、埼玉方面に行く機会がありました。ええと、あそこです。次回はその話でも。

2013/05/14

地テシ:044 春の美術展

今年の三月、比較的時間に余裕があったので、今まであまり行けていなかった美術展などにも足を延ばしていました。美術館や博物館は大好きなのですが、行くとゆっくり見てしまうので時間が掛かるのですよ。するとずっと立ちっぱなしなので足が痛くなるため、本番中などは控えていたのです。なので行くタイミングを逸していました。
しかしこの春は割と暇。だったので、いくつか気になる美術展に行ってきました。三月のレポートを五月に書くという遅さなので、なんと既に会期が終了している企画があるという本末転倒ぶり。ですが、書くだけ書いておきますよ。

まずは府中市美術館で行われた「かわいい江戸絵画」。
既に終了しています。
http://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/kikakuten/kikakuitiran/kawaiiedo/

















 最近では日本語の「Kawaii」が世界的にも注目を集める中、日本人の持つ独特の「Kawaii感」を江戸時代の絵画、版画の中から見つけ出そうとする本展。とにかくカワイイ絵が満載でした。
最近のクールジャパン的な、あるいはアニメ的な可愛さではなく、なんとなく「ゆるキャラ」方向の可愛さを中心に、様々な角度から「かわいい」を探し出していきます。

「かわいい」の元の形である「かはゆし」は、恥ずかしいという意味の「顔映ゆし(かおはゆし)」から来ており、恥ずかしい気持ちを投影して「気の毒だ」という意味に変化し、よって「かわいい」と「かわいそう」は近似した音と意味を持つ。
そこから「いとおしい」とか「けなげ」とか「小さいもの」とかを「かわいい」と言う様になったそうです。そのような分類から見た「かわいい」や、形状やリズムからくる「かわいさ」など、数多くの作品で見せてくれました。

見ながら、やはり「マンガ」は日本人ならではの伝統なのだなあとか思いましたよ。円山応挙の描く虎が高橋留美子先生の作品に見えちゃうんだから。
http://www.google.co.jp/search?&q=円山応挙+虎&tbm=isch

まあとにかく、色んなタイプのカワイイ絵画がいっぱいでしたよ。私は前期にしか行きませんでしたが、後期には展示内容も一部変わっていたそうで、そちらも気になりましたね。
ただ、当然入っていると思っていた歌川国芳の「金魚づくし」が展示されていなかったのだけが残念です。
http://www.google.co.jp/search?&q=歌川国芳+金魚づくし&tbm=isch



そしてもう一つは国立新美術館の「カリフォルニア・デザイン1930-1965 "モダン・リヴィングの起源"」。こちらはまだ開催中、6/3まで。
http://www.nact.jp/exhibition_special/2013/california/index.html






















 http://www.google.co.jp/search?&q=イームズ&tbm=isch
これらのイームズ・チェアなどを見ればピンと来る人もいるのでは。
奇しくもそのイームズ夫妻を題材にした映画「ふたりのイームズ 建築家チャールズと画家レイ」も5/11からミニシアター系で公開中です。
http://www.uplink.co.jp/eames/

ミッド・センチュリーとは字の通り「世紀の半ば」という意味で、1900年代の半ばにアメリカで起こった工業デザインの流行です。その頃は第二次世界大戦後半から戦後。「平和になった事による家具の爆発的需要」を「戦場にならなかったため余力のあるアメリカ」で「安くてシンプルでオシャレなモノ」を「合板やグラスファイバーなどの新素材」で作る、というのが基本的な流れです。
http://www.google.co.jp/search?&q=ミッドセンチュリーモダン&tbm=isch
要するにこんな感じの、我々が抱く「オシャレなアメリカ」風のデザインです。なんかツルッとした、ポップな色使い。オレンジとかグリーンとかね。

個人的にはアメリカドラマの「奥さまは魔女」とか「サンダーバード」とかを思い出したのですが、「サンダーバード」はイギリス制作でしたね。でも、なんかあんなイメージ。
あと、「日本万国博覧会」ですよ! 70年に大阪で開催された万博ですが、あの空気感がミッド・センチュリーだったような気がします。多分ちょっと違うけど。

おそらく、私が子供の頃の高度成長期、日本人がみんな憧れたあのアメリカの生活というのがこのミッド・センチュリーなのではないでしょうか。その記憶があるので、なんとなくいまだに私の心をくすぐるのかもしれません。


で、これらの展覧会に行ったのは、もちろんその展示が見たかったからで、まあ予想通り長時間見入ってしまったのですが、実はそれぞれついでに見ておきたかった施設が近所にあったのもまた事実です。
次回はそっちの方をご紹介したいと思います。