2011/07/19

テシタル地上派 003 Mr.インクレディブルの巻

「髑髏城の七人」の稽古も佳境。全てのシーンを当たり、どんどん殺陣も作られていっていますよ。いやあ、例によってドクロは殺陣が多い!いずれもカッコよく仕上がっていますよ。なお、私はあまり闘いませんのであしからず。

さて先日、ピクサーのアニメ「Mr.インクレディブル」がiTunesで配信されたりBlu-rayDiscが発売されたりしました。オリジナル公開は2004年。もう7年も経つんですね。それまでピクサーのアニメと言えば「トイ・ストーリー」のオモチャや「バグズ・ライフ」の昆虫など、人間ではない世界がモチーフでした。その方がアニメにしやすかったし異世界感もありますからね。そんなピクサーアニメで初めて人間社会を描いた作品がこの「Mr.インクレディブル」なんです。

人間を描く3DCGアニメは難しいんですよ。髪の毛や服装の質感も、顔の表情も、オモチャや昆虫や車のようにカリカチュアライズしにくいですからね。戯画化した上でのリアリティ。そんな高いハードルがあったのですよ、人間CGアニメには。しかし、それに挑戦し、見事成功を収めたのが「アイアン・ジャイアント」のブラッド・バード監督。2Dアニメの天才が3Dでもその手腕を発揮しました。
人間と言っても主人公達はスーパーヒーロー。人間離れした誇張した表現は3DCGの得意とするところ。そんないくつかの要因がピクサー初の人間アニメを成功に導きました。メイキングを見ると相当大変だったようですが。
かつてスーパーヒーローが活躍し、現在では疎まれているという世界設定は「WATCHMEN」にも似ています。主人公であるMr.インクレディブルもかつては崇められていたヒーローでしたが、今ではその影もなく保険会社で働く会社員。でも時々コッソリヒーロー活動をしていたりします。同じくヒーローパワーを持つ奥様、イラスティガールも心配しています。そしてその三人の子供たちもヒーローパワーを持っており、それぞれがパワーを隠して日常生活に溶け込んでいます。そんな一家がひょんな事から悪の組織を闘うことになり、というのがあらすじ。

私がピクサーアニメが好きであるというコトは以前にも書きましたし、その中でも「WALL・E」が好きだとも書きました。それまでオモチャや車などの無機物を有機化して表情豊かに表現してきたピクサーが、機械を機械として描いてなおかつ表情豊かである「WALL・E」が好きなのですが、「Mr.インクレディブル」では人間を人間として描いて、その生き生きとした表現が素晴らしいと思うのです。
かつてのヒーローとしての栄光を取り戻したい夫、今ではパワーを隠して平穏な生活を送りたい妻、生まれてからずっとパワーを隠すコトを強いられてきた子供たち。そんな一家がパワー全開で悪に立ち向かうってだけでテンション上がるじゃないですか!荒唐無稽なヒーローモノであり、しっとりとした家族愛モノであり、成長モノであり冒険モノであり、とにかく色んな要素をブチ込んでなおかつエンターテインメントとして成立しているトコロが素晴らしい。

劇場公開時には見損ねたので、DVDで見て驚いて好きになったこの作品がiTunesでダウンロード販売されると聞けば当然買うじゃないですか。しかし、ダウンロード版は吹き替えのみのバージョン。そして同日にBDが発売され、そちらには英語版や特典映像も収録されているとなればそちらも買うじゃないですか。これはカブリじゃないよ。便利なんだよ。BDならディスクを入れ換える必要がありますが、ダウンロード版ならそんな面倒がないから便利なんだよ。まあ、言い訳、ですかね。でも欲しかったんだからいいんです。いい作品は何度見てもいいんです。
そんなワケで、iTunes版とBD版、二回続けて見ちゃいましたよ。そして気付いたのですが、この作品に関しては日本語吹き替え版が合ってる!ピクサーに限らずジブリアニメでもそうですが、俳優さんが吹き替えを当てているアニメで成功した例は多いのですが、この作品の吹き替えは素晴らしいと思います。主人公の声が三浦友和さんってのがまず凄い!何度聞いても三浦さんの顔が浮かびません。ええと、これは褒め言葉です。映画「転々」での名演も印象深い三浦さんですが、今作では完全にMr.インクレディブルとして存在しています。さらに奥さんが黒木瞳さん、娘が綾瀬はるかさん、息子が海鋒拓也さん(子役)でして、ピッタリ合っています。悪ボスが雨上がり決死隊の宮迫さんってのも意外ですがハマってます。
BDで英語版も聞いたんですが、なんかこの作品に関しては日本語吹き替え版が合っている様な気がするんですよね。個人的感想ではありますが。

サブキャラクターも個性的。みんな興味深いのですが、私が好きなのはエドナ・モード。スーパーヒーロー達の衣裳を担当してきたデザイナーですが、今作では重要な役割を演じます。英語版では監督自身が声を当てたキャラクターですが、実に個性的で勝手で才能があるキャラクターです。それと敵の秘書・ミラージュ。グラフィックも素敵ですが、声がまた色っぽい。やっぱり有能な秘書ってキャラは大事ですよね。

折しも「カーズ2」が間もなく公開される今日この頃。3DCGアニメの技術はどんどん向上していますが、やはり作品としてのクオリティを決めるのは監督やスタッフの才能と努力だと思うんですよね。その点に於いてピクサー作品にはいつも驚かされます。まあ、実写映画でも同じコトなんですけどね。
老若男女にウケる、というこコトが実はとても難しいコトだというコトは判っているので、ピクサーの作品群には単純に敬意を表したいと思います。「ドクロ」も色んな人々に楽しんで頂けるように作りたいと思います。もちろん、狭い範囲に向けて作られた作品もそれはそれで魅力的なんですけどね。まあ、結局は「キチンと丁寧に作る」ってことなんでしょう。頑張りましょう。