2021/04/25

地テシ:205 Annapurna Interactiveってば! の巻 そのさん

まずは残念なお知らせをせねばなりません。現在大阪公演中の劇団☆新感線「月影花之丞大逆転」ですが、4/28(水)以降の全公演を中止とさせて頂きます。

http://www.vi-shinkansen.co.jp/UserArticle/Detail/480

昨春の「偽義経冥界歌」でも公演休止・中止を経験しましたが、ホントに切ないんですよ。一度目の緊急事態宣言が出されたのが丁度一年前。その延期公演を一年後に設定した団体も多く、それらが軒並み中止に追い込まれているのも残念でなりません。とにかく、なんとか終息に向かって欲しいと思います。まあ、ずっと思ってるコトなんですけどね。

ええと、その替わりというワケではもちろんありませんが、昨年10月に上演致しましたヴィレッヂプロデュース2020 Series Another Style「浦島さん」「カチカチ山」のWOWOW放送が決定しましたよ!

https://www.wowow.co.jp/release/005924

新型コロナ感染対策のために急遽企画を変更してお送りした三人芝居と二人芝居です。全ステージの生配信にも挑戦した作品ですが、いよいよWOWOWで気軽に見られるようになりました。まずは「浦島さん」が6/12(土)に、そして「カチカチ山」が7月にオンエアされます。
さらに! 6月上演のNAPPOS PRODUCE「りぼん、うまれかわる」の全キャストも発表されました。

http://napposunited.com/reborn/

このようなご時世ですので、無事公演が始められるのか、始められても最後まで公演が行えるのか、予断は許せません。関係者一同、細心の注意を払って準備したいと思っております。



さて! 気を取り直して、ゲームのお話です。私の好きなゲームデベロッパーであるAnnapurna InteractiveさんがSwitchで出しているゲームについてですよ。ちなみにこちらが現在Switch Storeで販売されているアンナさんの作品リストです。

https://store-jp.nintendo.com/search/?q=annapurna

「そのいち」では「GOROGOA」「Donut County」「Gone Home」をオススメいたしましたね。詳しくはこちらを。

https://note.com/macoto0807/n/ne971cbccb4ee


そして今回は「フィンチ家の奇妙な屋敷で起こったこと」「I am Dead」の二本のゲームをオススメしたいと思います。《死者の思い出を辿る》というテーマは同じなのに、全く違うテイストの二本なんです。


まずは「What Remains of Edith Finch フィンチ家の奇妙な屋敷で起こったこと」



あらかじめ言っておきますが、ちょっと不気味です。それは「何故だか皆が不思議な死に方をする一族の死の瞬間を追体験するゲーム」だから。ホラーではありませんが、ちょっと不気味なカンジです。でも、ホントに面白いんですよ! ホラーが苦手な私が言うのだから間違いない!
主人公は一族の末裔のエディス・フィンチ。エディスが幼い頃に離れた実家を訪れる所から始まります。この実家が奇妙なんですよ。タイトルにある「フィンチ家の奇妙な屋敷」の通り、増築に増築を重ねた奇妙な形をしています。
お母さんが亡くなった時にエディスに渡された一つの鍵。この鍵を持って実家に来てはみたものの、当然の如くこの鍵では玄関は開きません。なんとか屋敷に中に入ってから、数珠つなぎ的に全ての部屋を巡っていきます。そして、それぞれの住人の死の瞬間を追体験していくコトになるのです。

このゲームが面白いのは、それぞれの死に様を体験する時の操作性の多様性。なんとかして部屋に入って、思い出の品を見つけて、その部屋の住人の死に様を追体験する。その連続なのですが、それぞれのプレイフィールが全く違うので、常に新しい驚きが待っているのです。
ジャンルとしてはウォーキング・シミュレーターです。一人称視点で屋敷の中を歩き回りながら、ポインタの出る場所をクリックして物語を体験していく。まさにウォーキング・シミュレーターの王道です。パズル要素などはなく、順番に体験していくだけ。でもね! でもね! その体験の仕方がとにかく斬新で独特なんですよ!
ファンタジー風あり、RPG風あり、カメラ撮影風あり、コミック風あり。あまり詳しく書いてしまうとプレイの魅力を削いでしまいますのでこの辺りにしておきましょう。

要するに「飛び出す絵本の中に入り込むようなゲーム」です。実際にゲームの中でも「絵のうしろに入ったような」という表現もありますし、飛び出す絵本を操作するシーンもあります。バラエティに富んだ操作方法で死を体験しながら、一族の歴史を体感していくのです。
部屋の壁などに文字が現れてプレイヤーを誘導してくれるのですが、その文字の消え方がまたカッコイイんですよ。踊るように揺れたり、吸い込まれていったり。また、扉を開けたり本を開いたりするアクションも直感的で気持ちがいい。誘導も見事だし、全体的にスタイリッシュな印象です。
ウォーキング・シミュレーターにしては珍しく、何かを操作するとプレイヤー(エディス)の腕が見えますし、下を向くとエディスの胴体も見えます。二周目をプレイすると、ここにも仕掛けがあったんだなと気がつきます。仕掛けと言えば、要所に登場するひいおばあちゃんのイーディ(Edie)の本名が主人公と同じくEdithであるコトもね。

確かにちょっと怖そうだし不気味な印象はありますが、決してホラーではありません。画面が暗めなのは、廃屋なので電気が通っていないから。しかも部屋を巡る内に日も沈んで月明かりになってしまいます。ですが、そういった光の演出も見事で、空気感も美しい。
Switch版だけでなく、PC/PS4/Xbox Oneでもプレイできます。是非この美しくスタイリッシュなゲームに触れて頂きたいと思います。



次は「I am Dead」のご紹介を。こちらの主人公は、もう判りやすく幽霊です。「幽霊が他の幽霊を呼び出していく」ゲームなんです。でも、全然怖くなんかありません。ノリは明るいし、画面も超ポップです。



舞台は北大西洋に浮かぶ静かで穏やかな島。この島で生まれ育った主人公のモリス(この声優さんがまた素晴らしい)が海岸を散歩しているところから始まります。島の博物館を開設し、島民からも親しまれていたモリスさんですが、実は先日亡くなってしまいました。つまり主人公は幽霊なんです。
そして愛犬スパーキーの幽霊と出会いますが、スパーキーから島の危機を伝えられます。島の火山がもうすぐ噴火してしまうと。
島の火山を3000年に渡って守ってきたガーディアン(原文ではCustodian:管理者)の力が弱まり、急いで替わりのガーディアンを見つけなければ噴火してしまうのだそうです。そりゃ大変だ!

本来ならば島を愛するモリスさんが新しいガーディアンになれば良いのですが、ガーディアンになるためには死後1000日経っていなければならないと幽霊法典3-42bによって定められているのですって。なんだ、その妙にリアルな設定は。
とにかく、急いで5人の候補者の幽霊を説得しなくてはなりません。故人の思い出を持っている人を探し出し、その記憶の中から形見の品を割り出し、その形見の品を探し出します。その探し方が面白いんですよ!

島には多くの建物があり港があり公園があります。そのそれぞれを拡大してグリグリと回して眺めることができるのですが、さらにその内部まで透視することができるのです! ええと、透視というか、断面図を見ることができるのです。そう、CTスキャンとかMRIスキャンのように。これは新しい感覚です!

建物の中には部屋があり、たくさんの家具やら飾り物やらがあります。それらをクリックして拡大したり回したり中を覗き見たりして、ヒントを頼りに探し出していきます。これが実に楽しいんですよ。
時計の中には歯車が合ったり、家電の中には電子部品があったり、結構細かく作り込まれています。箱や袋の中で意外なモノが見つかったりもしますが、これを覚えておくと後で役に立つかもしれません。
また、人物にも調度品にもガラクタにもいちいち説明がついていて、細かい設定があるコトが判ります。その説明を読んでいくのも楽しいんですよ。注釈好きにはたまりません。

果たしてモリスとスパーキーは新しいガーディアンを見つけることができるのでしょうか。後半にはちょっと意外な展開になって、島の歴史を知ることになります。
形見の品を探して候補者の幽霊を呼び出していくだけなら、比較的短時間でクリアできると思います。しかしそれ以外にも、グレンキンという幸運の精霊を探したり、ミスター・ウィスタブルのナゾナゾに答えたりというミニゲームもあるんですよ。これをやり始めるとほぼ全てのオブジェクトを調べなくてはなりませんから結構大変です。
でもいいんです。このゲームは細かく設定された注釈を片っ端から読んでいくゲームでもあるのです。妙にリアルだったりウィットに富んでいたりする注釈を読みながらニヤリとするゲームなんです。まあ、ミニゲームはやらなくても進行には影響ないしね。

プレイしながら、なんとなく解体ゲームを思い出しました。解体ゲームというのは、オブジェクトをグルグル回したり眺めたりながらギミックを操作したり分解したりしていくゲームです。PC/PS4/iOS/androidの「GNOG」とかPS2の「鈴木爆発」とかね。ああ、どちらもマイナーなので判りにくいよね。まあ、いいや。


魚人という水棲人が町で普通に暮らしていたり(彼らの好物はバターを塗っていないトースト)、鳥人のような観光客がいたり高性能なロボットがいたりと、現在の地球とはちょっと違った世界観なのも面白い。
とにかく、ローポリゴンでポップなオブジェクト、フラットでカラフルな画面、優しくて可愛いキャラクター。もう隅から隅まで愛らしいゲームなんです。ちょっと作業感が強いかもしれませんが、膨大なフレーバーテキストを楽しみながら島の歴史を体感して頂けたらと思います。PC版もありますよ。



今回は「死者の思い出を辿る」二つのゲームをご紹介いたしました。ちょっと不気味で静謐な世界観と、驚きに溢れた操作感やストーリーが楽しめる「フィンチ家の奇妙な屋敷で起こったこと」、ポップでほんわかした世界観と、新しい操作感や優しいストーリーが楽しめる「I am Dead」。どちらもオススメですので、気になる方は是非。こんな時だからこそゲームで楽しむのも良いと思うんですよね。