2016/12/25

地テシ:082 「It's a Sony展」と「大ラジカセ展」

「VBB」が終わってはや二ヶ月。今は観劇月間の粟根です。先日もリリパットアーミーII「天獄界〜哀しき金糸鳥」を見に行って、KUTO-10次回公演に出演するうえだひろしくんと長橋遼也くんと制作の岡本康子さんに誤植について平謝りしてきた粟根です。ホントすみませんでした。

さあ、そんなワケでね。2016年も終わろうとしております。今年は新感線の二本だけに出演という少なさでしたが、それぞれが長かったからね。それなりに大変な一年でした。そんな一年をざっくり振り返っておきましょうか。

まずは最近行った、家電関係というか、ラジカセ関係の展覧会を二つご紹介いたしましょう。

一つは「It's a Sony展」。銀座にあります、螺旋状に構成されている五十年の歴史あるソニービルが解体されるにあたり、そのビル全体を使ってソニー製品の歴史が見られるという展覧会です。

http://www.sonybuilding.jp/ginzasonypark/event/


向かいにあります新築成った東急プラザ銀座から、展覧会広告幕の掛かるソニービルを撮ってみました。(そう、このガラス張りの東急プラザも江戸切子がモチーフとなっていて美しいですよね)

解体されちゃうので、ビル自体も展示の一部です。壁や柱の囲いも剥がされ、こんな風に建設当時の壁面が出てきてしまっているのも面白い。


ソニーが創業して70年。常に革新的で刺激的な製品を作ってきたソニーの歴史が体感できる展覧会です。膨大な製品の中から選ばれたエポックな製品がズラッと並びます。しかも写真OKなんですから嬉しい限り。

思えば、私の音楽生活は常にソニーと共にありました。生まれて初めて買ったラジカセがソニー、初めてのシステムコンポがソニー、初めての携帯音楽プレーヤーはもちろんウォークマンやディスクマン。家にはソニーのトリニトロンテレビがありました。そういえば初めてのデジカメもサイバーショットでしたし、劇団で初めて買ったビデオカメラはデジタルハンディカム。ゲーム機のPlayStationシリーズはもちろん全機持っています。ソニーづくし。

音楽以外にも、生活とは切り離せないAV機器としてソニーは常に私に周りに存在し続けているのです。まあ、正直な所を言えばテレビのWEGA、BRAVIAとかビデオのベータマックスとかAIBOとかVAIOとかは使っていないんですけどね。それでもソニー製品にはお世話になりっぱなしなんです。


ソニーのカセットテープも忘れられませんね。このシンプルなデザイン。一番多く使ったのは緑のパッケージのC90でした。当時のLPアルバム一枚が大体45分だったんです。両面使って二枚のアルバムが録音できました。
私が演劇を始めた頃、音効さんが使っていたのは主にオープンリールテープレコーダーでしたが、そのテープとして人気だったのもソニーとマクセル。安くて信頼できるのがこの二つのブランドでした。プロ器材としても信頼が高かったというコトです。

ソニーが凄いなと思うのは、プロユースとカジュアルユースが同じ地平に立っていたこと。プロが仕事で使う信頼性の高い製品と、コンシューマーが日常で使う製品とが同じレベルで混在したことだと思うのです。この展覧会でも、創業当時のとんがった新聞広告が展示されていましたが、消費者が面白がれてビックリできる製品と、シビアなプロが使える製品とが分け隔て無く商品化されていたのです。
とにかく製品に「日本初」とか「世界初」とかが多い。テープレコーダーとかトランジスタラジオとかウォークマンとか、エポックな製品を数多く作っています。それと同時に、放送局が使うようなプロ器材の名機も数多く輩出しています。
ビデオテープ時代のテレビ局で使われていたのはベータマックスですし、現在も使われているCD規格もソニーとフィリップスの共同規格です。CDが直径12cmに決まったのは、当時ソニー副社長の大賀典雄さんがベートーヴェンの第九が収録できるという理由で12cmを主張したのが決め手だというのも有名な話。


こちらは「カセットデンスケ」という愛称のテープレコーダー。そもそも街頭録音用のオープンリールレコーダーの名機「デンスケ」をソニーが出し、それが各放送局で愛用され、そのカセットテープ版としてこのカセットデンスケがリリースされ、当時の生録(なまろく)ブーム(蒸気機関車の音とかを撮ったりね)も相まって爆発的に売れたプロ用製品です。昔の劇団☆新感線の稽古場にもコレがあり、コレでヘビメタを流しながら稽古していたことを思い出します。テープ部分のフタは取れてなくなっちゃってたけどね。当時、音楽を流すのは若手劇団員の仕事だったのよ。

ソニービルの螺旋状のフロアを登りながらそういった色々なコトを思い出したってコトさ。世代によって思い出は違うでしょうが、やっぱりソニーって偉大なメーカーだなあとか思いました。
「It's a Sony展」は2017年2月12日までがPart-1。その後、展示を変えてPart-2が3月31日まで。でも、ソニー製品が体系的に展示されるのはPart-1の方だと思うので、ソニー製品になんらかの思い入れのある方は是非2月中旬までに行ってみて下さい。いろんなグッズも売ってるよ。ガチャガチャとかも。


もう一つの展覧会は池袋パルコ本館のパルコミュージアムで開催されている「大ラジカセ展」。ラジカセコレクターとして有名な松崎順一さんが監修する、100台のビンテージラジカセが大集合する展覧会です。

http://dairadicasseten.haction.co.jp/


こちらは各社のラジカセに絞った展覧会。「日本発アナログ合体家電」としてのラジカセをドカッと集めて並べています。松崎さんといえば、名著「ラジカセのデザイン!」の著者であり、ラジカセ愛に溢れた方。その松崎さんのコレクションが狭い会場に所狭しと並んでいます。狭いんだから所が狭いのは当然ですが。

ラジカセというのは言うまでも無く「ラジオとカセットテープレコーダー」が合体した家電。発展の内に、二個のカセットを再生できるダブルカセットとか、CDと合体したCDラジカセとか、テレビと合体したラテカセとか、まあ色々ととんでもない進化を遂げますが、それらの中から代表的な製品が集められており、我々カセット世代にとってはたまらない展覧会となっています。

進化の過程では、こんな製品も出てきました。


なにこれ? 私もこんな製品があることを知りませんでしたが、ラジカセとキーボードが合体しちゃったみたいですね。右上のソニー製品も、パッド型の音源が搭載されています。当時、「宅録(たくろく)」といわれた自宅音楽製作が流行っていたので、それ用の製品でしょう。今のDTM(Desk Top Music)のハシリともいえます。

ラジカセだけではなく、カセットテープ関係の展示も充実しており、80年代に流行した「カセットマガジン」のコーナーもあります。カセットマガジンとは、雑誌にカセットテープが付随したモノ。当時最先端の音楽を収録したカセットテープと、流行のライフスタイルを解説した雑誌がセットになっていました。これがもうオシャレでねえ。テクノポップと時を同じゅうして流行最先端でした。
そのコーナにはこんな商品も陳列されていました。


当時、富士カセットのCMにYellow Magic Orchestraが起用され、「テクノポリス」という名曲に乗せたCFが作られました。そのキャンペーンで抽選で当たるカセットマガジンがこちらだったんです。抽選だから非売品。簡単には手に入らないシロモノでしたから憧れでしたねえ。この宅録器材のようなシンセサイザーのようなパッケージも含めてマニア垂涎の品でしたが、入手できずに結局中身は判らずじまい。このパッケージに見える部分が実は本でして、真ん中部分だけがくり抜かれているというのもオシャレ要素です。

「大ラジカセ展」は12月27日まで。あ、もう終わるじゃん! 急がないと! ラジカセ世代にはキュンと来る展覧会ですので、是非終わるまでに行ってみて下さいませ。