「シレンとラギ」大阪公演もあと僅か。でもその後には長い東京公演が待っています。今のところみんな無事ですが、いつ何が起こるかも判りませんから気は抜けませんよ。
さて、そんな公演中なのですが、今回は比較的楽なポジションです。出番が特別多いわけでも無いし、激しい殺陣があるわけでもありません。なので最後の休演日はちょっと遠出をしてみようと思い立ちました。GWも終わって街もおとなしくなりましたしね。
遠出と言っても大したことはありません。ちょっと万博記念公園まで。以前「貧弱ユビキタス」でも万博公園の「EXPO '70パビリオン」に行った話は書きましたよね。あそこは面白い。でも、みんぱくも面白いんです。みんぱく。万博記念公園内にある国立民族学博物館です。子供の頃行ったっきり長らく行っていません。しかも現在特別展として「今和次郎 採集講義ー考現学の今」が開かれており、これが私向きな企画だよと知り合いから薦められていたんです。ちょっと前に東京のパナソニック汐留ミュージアムでも同様の企画展があったそうですが知りませんでした。気になるので行ってみましたよ。
ただし、二時間だけにしようと思いました。この手の博物館は大好きなのでしっかり見てしまうし、とても広くて充実した内容だというのも知っているし、本番中なので休演日に一日歩いて体力を使うのはまずいし、実家に寄る用事もあるし、ってなカンジで、時間が足りなくなるのは判った上で二時間という時間制限を自分に課した上で行ってきましたよ、みんぱく。
http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/20120426kon/index
今和次郎(こん・わじろう)というのは大正から昭和に掛けて活躍した民俗学者、建築家。東北地方の民家の研究家としても有名ですが、最近では「考現学」の創始者としての評価が高いのです。考現学(こうげんがく)。あまり聞き慣れない学問ですね。これは考"古"学に対応して今和次郎が作った言葉でして、考"現"学というのは現代の人間のライフスタイルを収集研究する学問です。
しかもその調べ方が徹底しているんですよ。ある日の銀座を定点観察し、男女の数、洋装か和装か、和装ならばその柄は、スカートならばその長さは、帽子は、小物は、眼鏡は、荷物は。その全てをメモし、スケッチする。そしてそれを統計としてまとめ、さらに判りやすいイラストも添えて表にする。あるいは、ある商店街の店を全て調べ、売っているモノや値段まで記録する。労働者の休息の仕方とその服装をスケッチする。何人も何人も。
とにかく「人のくらしの一切しらべ」の言葉通り、ある事物に関して徹底的に調べているんですよ。しかもその解説図のイラストと字がやたら巧い。今さんなのか、共同執筆者の吉田謙吉さんなのか、ものによってハッキリしないモノもありますが、いずれにしろ読みやすくて綺麗。しかもなぜかトレーシングペーパーに描いてあります。製図用インクでくっきり描かれているので時代が経っても美しい。なんとなくひさうちみちおさんっぽいタッチでもあります。
その後、この考現学という発想は色々な人に受け継がれていきます。会場にはそんな後継者たちの研究も展示されていました。特に名古屋の岡本信也・靖子夫妻の研究が興味深い。「現代の下着」という研究では、夫婦が一年間銭湯に通って、脱衣所で自分たちも着替えながら周りの人々の下着を観察し、それを出てからすぐにメモするという地道な手法で集めた結果が展示されているのですが、その展示方法が独特です。実際の布地を小さく切って人の形を作って、それを何十パターンも並べているのです。なんていうか手芸的というかキルティング的というか、とても可愛らしく判りやすい表示方法です。
他にも色々な考現学の成果が系統立てて整理展示されており、とても興味深い特別展でした。
そういえば、その中にモンゴル人の生活の一切しらべとして、実際に使われていたゲル(移動式円形テント)をそのまま買い取って展示していたのですが、なんと屋根にはソーラー発電パネル、中にはバッテリーと液晶テレビ、そして外には衛星放送用パラボラアンテナまでありました。モンゴルの遊牧民は液晶テレビで衛星放送を見ていたんですね。いや、決してモンゴルの人を差別しているわけではないのですが、素朴で牧歌的というなんとなくのイメージと違って驚きました。
その事実で面白いのは、あくまでモンゴルの伝統的な生活を守り、遊牧し、住居を移動させながらも、部分的には近代的な生活も取り込んでいることです。伝統と進歩を上手く調和させながら生活を営むという選択。実に力強い。
ここまでを何とか一時間で終えました。部分的には読み込めなかった資料もありましたが、ザックリとではありますが見終えました。さあ、次は常設展示です。本館の方に行ってみましょう。
と、ここから先は書いても無駄です。何しろ広い! 以前行った千葉の国立歴史民族博物館(れきはく)も広かったけど、それ以上に広い(延床面積比)! 「れきはく」は国内の展示が中心でしたが、「みんぱく」は世界の展示が中心。世界各国の民族の生活やら服飾やら道具やら宗教やら楽器やら、なんかもうこれでもかとばかりに展示されています。無理。一時間で見るなんて無理。判ってはいたけどね。
気になる部分だけ見て、後は飛ばし見しながらでも一時間半掛かりました。予定オーバーです。二階の主展示室だけでコレですから、さらに一階展示とミュージアムショップ、ビデオライブラリー、三階の図書室などをじっくり見るつもりなら一日遊ぶことができると思いますよ。今度行こうとか思っている方がいらっしゃいましたら、相当覚悟して行ってくださいね。しかもモノレールの最寄り駅から15分くらいかかるぜ!
さて、そんな公演中なのですが、今回は比較的楽なポジションです。出番が特別多いわけでも無いし、激しい殺陣があるわけでもありません。なので最後の休演日はちょっと遠出をしてみようと思い立ちました。GWも終わって街もおとなしくなりましたしね。
遠出と言っても大したことはありません。ちょっと万博記念公園まで。以前「貧弱ユビキタス」でも万博公園の「EXPO '70パビリオン」に行った話は書きましたよね。あそこは面白い。でも、みんぱくも面白いんです。みんぱく。万博記念公園内にある国立民族学博物館です。子供の頃行ったっきり長らく行っていません。しかも現在特別展として「今和次郎 採集講義ー考現学の今」が開かれており、これが私向きな企画だよと知り合いから薦められていたんです。ちょっと前に東京のパナソニック汐留ミュージアムでも同様の企画展があったそうですが知りませんでした。気になるので行ってみましたよ。
ただし、二時間だけにしようと思いました。この手の博物館は大好きなのでしっかり見てしまうし、とても広くて充実した内容だというのも知っているし、本番中なので休演日に一日歩いて体力を使うのはまずいし、実家に寄る用事もあるし、ってなカンジで、時間が足りなくなるのは判った上で二時間という時間制限を自分に課した上で行ってきましたよ、みんぱく。
http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/20120426kon/index
今和次郎(こん・わじろう)というのは大正から昭和に掛けて活躍した民俗学者、建築家。東北地方の民家の研究家としても有名ですが、最近では「考現学」の創始者としての評価が高いのです。考現学(こうげんがく)。あまり聞き慣れない学問ですね。これは考"古"学に対応して今和次郎が作った言葉でして、考"現"学というのは現代の人間のライフスタイルを収集研究する学問です。
しかもその調べ方が徹底しているんですよ。ある日の銀座を定点観察し、男女の数、洋装か和装か、和装ならばその柄は、スカートならばその長さは、帽子は、小物は、眼鏡は、荷物は。その全てをメモし、スケッチする。そしてそれを統計としてまとめ、さらに判りやすいイラストも添えて表にする。あるいは、ある商店街の店を全て調べ、売っているモノや値段まで記録する。労働者の休息の仕方とその服装をスケッチする。何人も何人も。
とにかく「人のくらしの一切しらべ」の言葉通り、ある事物に関して徹底的に調べているんですよ。しかもその解説図のイラストと字がやたら巧い。今さんなのか、共同執筆者の吉田謙吉さんなのか、ものによってハッキリしないモノもありますが、いずれにしろ読みやすくて綺麗。しかもなぜかトレーシングペーパーに描いてあります。製図用インクでくっきり描かれているので時代が経っても美しい。なんとなくひさうちみちおさんっぽいタッチでもあります。
その後、この考現学という発想は色々な人に受け継がれていきます。会場にはそんな後継者たちの研究も展示されていました。特に名古屋の岡本信也・靖子夫妻の研究が興味深い。「現代の下着」という研究では、夫婦が一年間銭湯に通って、脱衣所で自分たちも着替えながら周りの人々の下着を観察し、それを出てからすぐにメモするという地道な手法で集めた結果が展示されているのですが、その展示方法が独特です。実際の布地を小さく切って人の形を作って、それを何十パターンも並べているのです。なんていうか手芸的というかキルティング的というか、とても可愛らしく判りやすい表示方法です。
他にも色々な考現学の成果が系統立てて整理展示されており、とても興味深い特別展でした。
そういえば、その中にモンゴル人の生活の一切しらべとして、実際に使われていたゲル(移動式円形テント)をそのまま買い取って展示していたのですが、なんと屋根にはソーラー発電パネル、中にはバッテリーと液晶テレビ、そして外には衛星放送用パラボラアンテナまでありました。モンゴルの遊牧民は液晶テレビで衛星放送を見ていたんですね。いや、決してモンゴルの人を差別しているわけではないのですが、素朴で牧歌的というなんとなくのイメージと違って驚きました。
その事実で面白いのは、あくまでモンゴルの伝統的な生活を守り、遊牧し、住居を移動させながらも、部分的には近代的な生活も取り込んでいることです。伝統と進歩を上手く調和させながら生活を営むという選択。実に力強い。
ここまでを何とか一時間で終えました。部分的には読み込めなかった資料もありましたが、ザックリとではありますが見終えました。さあ、次は常設展示です。本館の方に行ってみましょう。
と、ここから先は書いても無駄です。何しろ広い! 以前行った千葉の国立歴史民族博物館(れきはく)も広かったけど、それ以上に広い(延床面積比)! 「れきはく」は国内の展示が中心でしたが、「みんぱく」は世界の展示が中心。世界各国の民族の生活やら服飾やら道具やら宗教やら楽器やら、なんかもうこれでもかとばかりに展示されています。無理。一時間で見るなんて無理。判ってはいたけどね。
気になる部分だけ見て、後は飛ばし見しながらでも一時間半掛かりました。予定オーバーです。二階の主展示室だけでコレですから、さらに一階展示とミュージアムショップ、ビデオライブラリー、三階の図書室などをじっくり見るつもりなら一日遊ぶことができると思いますよ。今度行こうとか思っている方がいらっしゃいましたら、相当覚悟して行ってくださいね。しかもモノレールの最寄り駅から15分くらいかかるぜ!