2017/01/15

地テシ:087 「人喰いの大鷲トリコ」と「The Witness」そのよん

今年の頭に公表されましたので「トリドクロ」に出演することがやっと言えるようになりました。詳細はこちら。
http://www.tbs.co.jp/stagearound/toridokuro/
それと、新年一発目のお仕事は、松重豊さんがマスターを務めるFMヨコハマ「深夜の音楽食堂」のゲストです。1/17(火)と1/24(火)の24:30。全くタイプが違うのに、意外と好きな音楽が似ている二人のおじさんが音楽について話します。
http://www.village-artist.jp/UserNews/Detail/234
http://www.fmyokohama.co.jp/pc/program/ShinyanoOngakushokudo
FMラジオがなくても、スマホなら「radiko」というアプリで、PCならradiko.jp公式サイトで聞けます。さらに、一週間以内ならばradikoタイムフリーでも聞けますよ。


さて、前回に引き続き「The Witness」というパズルゲームにハマっているという話。美しい景色の中に散りばめられたパズルをひたすら解いていくオープンワールドパズルゲーム。シンプルな一筆書きパズルなのに、飽きずに楽しめて難しい。それは何故なのかって話ね。そのワケを書きましょう。

それは「どんどんルールが変わっていく」から。最初は「スタートからゴールまで繋ぐ」だけだったのが、なんか急に盤面に謎の記号が書き込まれた迷路に出逢うのです。こうなると何らかのルールに則って一筆書きを解かなければならない。ところが、そのルールについては一切書かれていないのです!
島を歩き回っていると、同じようなパネルが六つくらい並んでいる所があります。それが新ルールのチュートリアルらしい。といっても説明はないんです。簡単なパズルを新ルールの仮説を立てながら解いていきます。解けたならばその仮説は正しい。解けなければ仮説を立て直す。そうやって六つくらい解けばルールが理解できますので、その先の扉にあるパネルの迷路を解いて扉を開けたりしていきます。
ところが、しばらく進むと今度はまた別の記号が書き込まれた迷路が出てきます。そうすると解けない。だってルールが変わったから。
じゃ、この扉は放っておいて別の場所に行きましょう。そこがオープンワールドの良いところ。島は広い。まだまだたくさんパズルはあります。解けるヤツから解いていきましょう。その内に新しいルールもわかることでしょう。
噂ではパズルは650個以上もあるらしいです。中には体を使って解くパズルや島の大地自体を使うようなパズルも出てきますが、結局ぜーんぶ一筆書き! これほどまでに一筆書きにこだわった、しかしバラエティに富んだパズルは見たことがありません。

オープンワールドのお陰で、全てのパズルを解かなくても最終ステージには辿り着けます。なのでそろそろ終盤っぽいのですが、いやあ益々難しい! どんどん新ルールを理解して、どんどん行けるところは広がるのに、謎は深まるばかりです。え、ココもパズル? コレもパズル? ココとココが繋がってるの? この意味ありげなオブジェ何?
パズルの苦しみと楽しみ、ギミックの驚き、新鮮な閃き。空気感は往年の名作アドベンチャー「MYST」や「Portal」を思わせ、パズルを解いて進んでいくのはiOS・androidの名作パズル「Tengami」や「Monument Valley」を思わせます。
いずれも静かで独特の雰囲気を持つ名作ばかり。まあ、単に私がこういうタイプの作品が好きなだけでもありますが、こういうタイプなら何でも面白いかと言えばそうでもなく、中でも「The Witness」は相当に面白いと思います。
ただし、解けなくてかなりイライラしますけどね。悩みながら自力で解くからこそ面白い。その分だけ先に進めた時にはカタルシスを感じるのですが、相当にパズル大好きな人にしかお勧めできない作品です。

「The Witness」はPS4でダウンロード専売のインディーズゲーム(他にPC版と海外XBOX One版もあり)で、デザインしたは時間巻き戻し可能な名作アクション「Braid」を作ったジョナサン・ブロウ。インディーズゲームではメーカーの束縛がない代わりに予算が少ない場合が多いのですが、そのお陰できらりと光るアイデアの作品がたくさんあります。これもその成果の一つ。
ガンガン宣伝されるような大作ばかりでなく、こういう隠れたインディーズ名作がどんどん注目されると良いなあとか思います。では、また。




追加の後日談……

ようやくにして、ついさっきエンディングまで辿り着きました! あー、面白かった! そして辛かった! なんでお金出して買って、時間もたんまり掛けてまでイライラしているのか判りませんが、まあ要するに楽しいからなんですけどね。楽しく辛く、そして辛く楽しい。これぞゲーム。

なお、全てのパズルを解かなくても最終ステージまで行けるのですが、全てのパズルに挑戦したい方は、なんとなくラストっぽいなっと思ったらセーブしておく(ゲームを終了すればオートセーブされます)コトをオススメします。おおむねスタンバイモードで中断しながらプレイしてきた私は、今、エンディングを終えて呆然としております。さすがにもう一度頭からプレイし直す気力は無いぜ! するけど! するんかい!

2017/01/13

地テシ:086 「人喰いの大鷲トリコ」と「The Witness」そのさん

お正月三が日のどこかで都心のビジネス街を散策するのがここ数年の定番なのですが、それは普段は人通りの多い繁華街が閑散としているのを見るため。結構楽しいんですよ。
で、今年は目先を変えて虎ノ門から日比谷、丸ノ内と抜けてみたのですが、ここらはむっちゃ人が多い! 霞ヶ関あたりは街宣車と警官で騒がしいし、丸ノ内・東京は一般参賀の人と駅伝応援の人とでごった返すし。結局、いつもの大手町、神田、御茶ノ水あたりで人が少なくなってホッとするのね。


こちらは神田司町あたりですが、ほら、閑散としてるでしょ。いつもなら人と車で一杯の場所ですよ。


さて、待ちに待った「人喰いの大鷲トリコ」を頭を悩ませながらやっとクリアした私。「これ、どーやって解くんだ?」とホントに頭を悩ませたので、ダウンロードしたまま放っておいた「The Witness」というゲームを軽い息抜き気分で始めてしまった私。そしたら見事にハマってしまってずっとプレイしている私。そのままいつの間にか日付が変わって年を越してしまっていた私。そしてまた今年も頭を悩ませている私。そう、それが私だ。

「The Witness」はパズルゲーム。でもただのパズルではありません。一人称視点で探索しながら進むアドベンチャーパズル。いわば「オープンワールドパズル」なのです。ん? それはいったいなんだ?
オープンワールドというのは、ここ数年のゲーム業界で流行っている「ローディング無しで自由に移動できる広大なフィールド」のコトです。最近では「GTA5」とか「ウィッチャー3」とか「Fallout 4」とか、要するにシナリオの自由度が高く、広大なフィールドを歩き回りながら好きな順番で進んでいけるようなタイプのゲームです。先日発売された「FFXV」でもオープンワールドシステムが採り入れられて話題になりました。
「The Witness」の舞台はある無人島。決して広大ではありませんが、かなり自由に歩き回れます。この《フィールドを自由に歩き回れる》というのがポイント。

普通のパズルゲームの場合、トップ画面にズラッとパズルが並んで、一問が解けたら次のパズルがオープンして、みたいに進んでいきますよね。純粋にパズルをプレイしたいならそれが正解です。
しかし「The Witness」ではパズル問題が島のあちこちに散りばめられているのです。島には小屋や地下室や庭園などがあり、森あり池あり山があり。シンプルながらも美しい景色の中を歩き回りながらパズルを探してどんどん解いていくのです。とりあえずこちらのトレーラー動画をご覧下さい。



ちょっと怖そうな雰囲気がありますが、ホラー系ではありません。廃墟風の無人島だからちょっと不気味な感じはしますけど、コワくはありません。
で、この動画を見て頂ければ判るのですが、出てくるパズルというのが、全部「一筆書き」なんです。迷路風の一筆書きだけなんです!
アドベンチャーパズルの場合、解くべき謎はバラエティに富んでいるのが普通です。スイッチを押したり、石像を動かしたり、光を当てたり、謎のメッセージを解読したり。そうやって飽きさせないようにしているというか「今度はこう来たか!」という閃きを楽しむのです。
しかし! 今作では文字情報は一切無く、パズルはずーっと一筆書きなんですよ。「スタートからゴールまで一本線で交わらずに繋ぐ」だけの迷路。しかも大して広くない盤面。せいぜい6×6マスくらいの正方形。なのに飽きないんだよな! そして難しいんだよな! なんでだ?

その答えは次回!

2017/01/04

地テシ:085 「人喰いの大鷲トリコ」と「The Witness」そのに

やっぱり年越しちゃった! 2017年です! 今年もよろしく! 例年の如くゲームをプレイしながら気がついたら年を越していましたけど!

てなワケで年またぎで2016年の仕事まとめ! 舞台は新感線の「乱鶯」と「Vamp Bamboo Burn〜ヴァン!バン!バーン!〜」の二本だけ。それと「ドナインシタイン博士の禁断カフェ」に二回参加。
連載では誌名ごとリニューアルされた演劇専門誌「えんぶ」(旧演劇ぶっく)の人物ウォッチング。昨年は平野良、大東駿介、稲森いずみ、大谷亮介、上田大樹、小池栄子各氏(敬称略)を書かせて頂きました。同じくえんぶ系のネットコラム「未確認ヒコー舞台:UFB」で毎月第一木曜日に演劇用語の解説をさせて頂いています。
あとは「乱鶯」の稽古場レポートを書いたり、エイプリルフールには新感線公式ツイッターさんを乗っ取ったり、誤植込みでプロジェクトKUTO-10「あたらしいなみ」のチラシを作ったり。その節はすみませんでした。
以上まとめ終わり。こんなカンジ?


さあさあ、まとまったのでいよいよ「人喰いの大鷲トリコ」について語りましょう。この冬のプレイステーションTVCMでは年末の注目作品が山田孝之さんのパワフルな早口で述べられていましたが、その中で「FFXV」や「龍が如く6」と並んで名前が挙がったのがこの「トリコ」です。YouTubeの「PlayStation最新CM」チャンネルでは、このCMに加えて「トリコ」の発売カウントダウンCM五連作も見るコトができますよ。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLOkZyHIVzUcO1sC99Xa0U3W17NAPLPAWJ
この「あと5日。ある会社員の場合篇」いいなあ。

まあ、それほどまでに待たれていてそれほどまでに注目されているというコトです。もちろん私も待っておりました。注目しておりました。ICOとワンダ好きならみんなそうだったと思います。この二作については前回をご参考に。

今作も前二作と同じように謎解き系アクションアドベンチャーです。主人公の少年が謎の遺跡に閉じ込められた所から物語は始まります。その横には「人喰い」と恐れられる、大きな犬のような鳥のようなトリコという獣が鎖に繋がれて横たわっています。さあ、どうする?
遺跡を脱出するためには少年とトリコが協力しなくてはなりません。高い壁を乗り越えたり遠い足場に行くためにはトリコの跳躍力が必要ですし、スイッチがある小さな部屋や狭い隙間を通るには小柄な少年でなければ辿り着けません。
当然ながら会話も通じませんので、コミュニケーションを取るのだって一苦労です。トリコがお腹が空いているらしい時にエサ(何やら光る物質が入ったタル)をあげても、始めはなかなか食べてくれません。しかし、何度もエサをあげている内に警戒心も解け、徐々に二体は仲良くなっていきます。始めはちょっとコワかったトリコが実に可愛く見えてきます。この二体の関係性の変化がイイんですよ!

先に進むためにはトリコに乗る(あるいはしがみつく)コトが必要。羽毛に包まれてモフモフなトリコに飛びついてよじ登るところはワンダっぽいですが、今作ではR1ボタンを押しっぱなしにする必要はありません。トリコに乗り、トリコと共に進んでいくコトで広がる(あるいは広がらない)謎の遺跡の閉塞感。数々の試練が二体を阻みます。

前二作が混ざったような作風になっておりまして、閉じ込められた遺跡から脱出しようとするのはICO風、相棒である大きな獣トリコによじ登るのはワンダ風。同じく重要だったR1ボタンは、今作では「トリコを呼ぶ」またはトリコに乗った状態で「トリコに指示を出す」ためのボタンになっており、これまた印象的です。

PS4になって画面がさらに美しくなりました。トリコの大きさと可愛さ、小さな少年との対比、遺跡の広さ高さ荒涼さ。巧妙なカメラワークも手伝って、空気感すら伝わる美しさです。まあ、このカメラワークは操作上ではちょっとうざったくはあるんですけど。「トリコ邪魔!」とか時々思いますけど。時々だけね。

しかし、例によってヒントが少ない。前二作と違って、今作では時々文字によるヒントがあり、成長後の少年らしき人の声で「その時、私は〜したのだった」みたいなコトを言ってくれるのですが、それでもまあ判らない。とりあえず、青い石の床や出っ張りは重要。あと、トリコの行動や向く方向も重要。今作もまた絶妙な難易度です。攻略情報をネットで探したくなるのをグッとこらえてほぼ自力で解きました。ほぼ? ええ、ネットサーフィン中に一部、ちらっとヒントが見えちゃったのよ。でもまあほぼ自力。それでもまだいくつかエサのタルを取り損ねているようですが、進行には支障はありません。

私はこのゲームを「声の出るゲーム」と呼びたい。謎が判らなければ「えー、どうすんの?」と呟き、謎が解ければ「よしっ!」とガッツポーズをし、少年が落ちれば「ああっ!」と声が漏れ、トリコが救ってくれれば「おおっ!」とため息が出る。これは、<見る>だけである映画と違って、<操作する>という行為が介在するゲームならではの快感のような気がするんですよ。プレイしながら何度も声が出て、何度もドキドキして、それがまた楽しい。もどかしくも楽しく操作しながら、小さく声を上げながら、そして時々イライラしながら、最後の方では終わるのが勿体なくなってきちゃうんだよなあ。



このゲームについてもう少し詳しく知りたい方は、AUTOMATONさんのこちら↓の素敵な記事をどうぞ。ICO、ワンダ好きの方のための、詩的で力強いレビューです。ネタバレはありません。
http://jp.automaton.am/articles/impressionjp/20161216-36257/

さて、前二作にはクリア特典がありました。ICOの二周目のスイカエンディングとかライトセーバーとか、ワンダのハードモードとかタイムアタックとか。今作でもちょっとしたクリアのご褒美がありまして、それで二周目に挑戦したくなるんですよ。で、二周目を始めちゃったんですけど、今はあるゲームのせいで一旦保留。トリコを保留してまで止まんなくなっちゃって、年越しまでもそのゲーム。
そのゲームが「The Witness」なのですが、コレについては次回。ってまた引っ張ります。

2016/12/30

地テシ:084 「人喰いの大鷲トリコ」と「The Witness」そのいち

さて、展覧会関係の話が続いてしまいましたので、ここらでちょいとゲームの話でも。ていうか2016年のまとめはしないのかよ! いや、したいんですけど、撮りためた面白写真も大量なんですけど、今はやはりこのゲームの話をせねばなりますまい!
それは! もちろん「人喰いの大鷲トリコ」!

私が「ICO」と「ワンダと巨像」が好きだというのはことあるごとに言ったり書いたりしてきましたし、実際にこの二つのゲームにはファンが数多くいます。そのクリエイター・上田文人さんの最新作となればプレイせずにはいられません。ていうかプレイしました。そしてやっとクリアしました!

思い起こせば7年前。2009年のE3でこの作品のビジュアルが発表され、世のゲーム好きが歓喜しました。もちろん私も歓喜しました。それから紆余曲折があり、発売日が延期されたりして、やっとこの12/6に発売されたのです! そりゃ買うでしょ! プレイするでしょ!

改めてまとめましょう。「ICO」は2001年にPS2で発売されたアクションアドベンチャー。謎の古城に閉じ込められた少年イコが、途中で出逢ったヨルダという少女と共に古城を抜け出すまでをプレイします。アクションではありますが、このゲームのポイントは謎解きにあります。行く手を阻む扉や段差を、スイッチを操作したりパズルのような仕掛けを解きながら進んでいきます。この仕掛けが難しい!
序盤こそ簡単な謎ですが、進むにつれて難易度が上がっていきます。文字情報のヒントは一切無く、交わされる会話も架空の言語と象形文字のような字幕ですから全く判りません。ヒントが出るとしても、ヨルダが怪しい場所を指し示すだけ。とにかく謎を解かない限り先には進めませんから、力業ではクリアできないんですよ。こっちのスイッチを押しながらあっちのスイッチを押すとか、動かせる足場を移動させて高いところに登るとか、バラエティ豊かな謎がイコとヨルダを(つまりプレイヤーを)悩ませます。
当時は攻略情報をネットで見るという発想がなかったので、謎に詰まると数日に渡って進めないという状況になります。そのぶん、数日悩んで謎が解けて先に進めた時には堪らない快感がありました。なるほど、そう解くのか! という正解に辿り着くまでは試行錯誤の連続です。こう書くと辛いだけのような気もしますが、当時は本当に苦しみながら楽しんでいたのです。
時には影のような煙のような敵キャラクターがワラワラと湧いてヨルダを連れ去ろうと寄ってきまして、それを木の棒で蹴散らしながらヨルダの手を引いて逃げます。この「手を繋ぐ」というシステムが今作のキモ。ヨルダは自発的には動かず攻撃能力もありませんから、手を繋いで連れて行くしかないのです。手を繋ぐにはR1ボタンを押し続けるしかなく、このR1ボタンを押しながら走ったり蹴散らしたりしなくてはならないという操作システムがイコとヨルダの絆を感じさせるものでした。
この練りに練られたゲームデザインが絶妙に作用して、私にとって、そして世のゲームファンにとって忘れられない作品となったのです。


「ワンダと巨像」も同じスタッフが手がけた、PS2で2005年に発売されたゲーム。こちらも同様のアクションアドベンチャーですが、ちょっと趣が違います。
主人公はワンダという青年。ワンダは愛馬アグロと共に広大なフィールドを駆け回り、その各所に点在する巨像を斃して廻ります。巨像は名前の通り巨大な石像で、それぞれ人型や動物型の異なった姿をしています。その全てに弱点があり、ワンダがその巨像によじ登って弱点を攻撃すればそのステージのクリアとなります。
今作のキモがこの「よじ登る」という動作。巨像の表面には毛のような草のようなものが生えており、R1ボタンを押すことによってその毛を掴みよじ登ることができます。つまりR1ボタンを押しながら各種アクションをしていくのですが、この点がICOとの共通点。また、巨像に辿り着くまでに仕掛けを解いていかなければならないのも共通点です。
どうやって巨像に取り付くのか、どうやって弱点に辿り着くのか。ICOと同様に独特の美しく静謐な世界の中で冒険は紡ぎ出されます。二作ともイベントシーン以外にBGMはほとんど無く、基本的に風音などの効果音のみで構成されます。これがまた世界観の構築に一役買っているのです。

二作ともプラットフォームはPS2でしたが、2011年にはPS3用にリメイクされています。絵が綺麗になったり3Dに対応したりしていますが、ゲームシステムは全く同じ。謎解きの難易度も同じで、再プレイしても色あせない魅力が詰まっていました。

そして「ICO」から15年、「ワンダと巨像」から11年、リメイクから5年。いよいよ上田文人最新作である「人喰い大鷲のトリコ」が発売されたのですよ! プレイしたよ! クリアしたよ!


といったところで長くなっちゃったので、「トリコ」については次回。ていうか、例によって年内にまとめられるのか?

2016/12/28

地テシ:083 「東京凸凹地形」展

前回は「It's a Sony展」と「大ラジカセ展」の二つをご紹介しましたので、展覧会繋がりでもう一つご紹介しておきましょう。

それは東京都立中央図書館にて現在開催されております「東京凸凹地形 -地形から見た東京の今昔-」という、いかにも私の趣味にピッタリの企画展示。図書館ならではの膨大な書籍資料を駆使して、東京の凸凹について詳しく説明しています。

近年、「タモリ倶楽部」や「ブラタモリ」などのテレビ番組や、東京スリバチ学会・大阪高低差学会などのフィールドワーク団体のお陰で、都市と凸凹の関係界隈が大変に盛り上がっております。関連書籍なども数多く出版されており、もちろん私の大好物なのですが、ついに東京都までが動き出しました。それがこの展覧会です。

都立中央図書館ですから東京に関する書籍なら他の追随を許しません。その膨大な資料の中から東京の凸凹に関する書籍を並べて、参考になるページには付箋も貼って、しかも手に取って自由に閲覧可能なのです。ただ、困ったことに、私はそのほとんどの書籍(官公庁の技術資料を除く)を持っていたんです。持ってるのかよ! 困るのかよ! 困んないだろ!
しかし、これだけの資料がズラッと並んでいるのは壮観でした。書籍はテーマごとに分類され、さらに古地図や古写真もパネル展示されています。解説も丁寧で、パネル展示だけ見ていても充分に面白いのですが、気になるテーマがあればその下のテーブルに置いてある書籍を読むと更に深く掘り下げられるようになっています。テーブルと椅子もたくさんあるのでじっくり腰を落ち着けて読むことができます。一冊ずつしかないから、誰かが読んでいたらその資料は読めないけどね。

そんな中、最も私の注意を引いたのが、会場に入ってすぐ左にドーンと掲げられている、展示の一番始めを飾る大きな標高地図。東京地図研究社作成の「東京全図」なのですが、横に長い東京都を納めるためにかなり引いた構図でして、お陰で武蔵野台地の古多摩川扇状地を広く見ることができます。
ここで目を引くのが、扇状地に中にポツンと島状に取り残された狭山丘陵。人工湖である狭山湖と多摩湖がある、トトロの森の愛称で知られる里山ですが、ココだけポツンと標高が高く、かつデコボコしているんですよね。
これは関東平野を形作る古多摩川の流路が、北東経由(現在の入間川、荒川方面)から南東経由(現在の多摩川)へと変化した時に削り残された部分のようです。なので島状に残っているんですね。
当展覧会は写真がNGだったのでお見せできませんが、iPhoneアプリの「スーパー地形」から似たような標高図を取り出してみました(この「スーパー地形」というアプリもスグレモノなので、いずれちゃんとご紹介したいと思います)。

このセンター部分が狭山丘陵。周りが放射状に平らなのにココだけ盛り上がってるでしょ。狭山丘陵に寄ってみるとこうなります。

人工湖がハッキリ判ります。確かに「削り残された」って感じがするでしょ。

このような地表の高さを色分けとデコボコとで表現した標高図は私の大好物ですが、東京に関してはこちらの都区部を中心としたデジタル標高図が有名でして、この印象が強すぎて東京都全図の方は忘れがちなのよ。だから、この展覧会でこの標高図を見た時に、特徴的な狭山丘陵が印象的だったって話。丁度地図のど真ん中だしね。


とはいえ、この展覧会の目玉はなんといっても立体地図「東京の微地形模型」が展示され、しかも話題となったプロジェクションマッピングまで行われているコトでしょう。このblogでも以前詳しくレポートしました。
http://awanemacoto.blogspot.jp/2012/07/2_15.html

「東京凸凹地形」展は撮影禁止だったのですが、この模型に関してだけは静止画のみ撮影可でした。

当時、期間限定で展示されていたあの立体地図をもう一度見るコトができるのです、マッピング映像つきで! これは気になるでしょう。2012年に見損ねた方はぜひ一度ご覧下さいませ。

こちらの「東京凸凹地形」展は2/12まで。ちょっと面白い仕掛けのクリアファイルも貰えちゃうよ。年末年始は改装も含めて休館日が多いのでお気を付けて。スケジュールの確認はこちらから。
http://www.library.metro.tokyo.jp/tabid/2287/Default.aspx?itemid=1436

会場となる都立中央図書館は有栖川宮記念公園の北東端。最寄り駅は東京メトロ広尾駅ですが傾斜地にあるので結構な上り坂になります。でも、この上り坂を登るという行為が既に地形に考察を巡らせるよいキッカケとなりますので、ちょっとした散策気分でお出かけ下さい。この辺りの地形も面白くていいんですよ。