2012/07/21

テシタル地上派 031 スリバチカフェ2 その三

さあ、iPhone5が来月8/7に発表になるのではないかと噂される昨今、如何お過ごしでしょうか? 私はそわそわお過ごしです。
http://www.gizmodo.jp/2012/07/iphone_587.html
まあ、なにしろまだ噂ですからね。縦長になるのではないかとか色々と憶測されておりますが、まあとにかく正式発表を待ちましょう。


さて、前回は「スリバチカフェ2」の様子をお伝えし、これからも毎週土曜日には南洋堂で見ることができる「東京の微地形模型」について書きましたが、まあ正直言って誰しもが面白いと思えるモノではないかもしれません。
いや、面白いと思うんですよ。「へえ、東京ってこんなに凸凹してるんだ」と思ったり、「あのでっぱりはどの土地にあたるのかな?」とか考えたりできますから。ここにさらに鉄道や道路などの映像をプロジェクション・マッピングされると「ああ! なるほど!」という驚きや「ココはあそこか〜」という確認ができますから更に面白みが増しますが、ノー・マッピングの微地形模型だけを眺めてもピンとこないかもしれません。

地図というのは要するに「記号」です。いや、卍や〒といった地図記号という意味ではなくて、地表にあるモノを色々な手段を用いて記号として書き表したモノです。その記号のルールをよく理解していなければ面白くありません。
例えばサッカーの試合にしても「オフサイドって何?」ってルールを知っておいた方が面白みが湧くじゃないですか。だからディフェンスが上がったんだな、とかね。柄にもなくサッカーネタとか書いちゃっていますが、ルールを知っていた方が面白い、という例えとして書いてみました。サッカーには詳しくありません。

まあ、地図を見るのにもそれなりにルールがあるってコトです。なので、この微地形模型だけをポンと見せられてもあまり詳しくない方にはその面白みが充分伝わらない可能性があります。
つまり、高さ方向に強調された立体の東京地図、しかもマッピングのないノッペリとした立体地図を見せられても、予備知識の無い方だと「ふーん」で終わるかもしれないんですね。
ここに予備知識があると「ああ、あの出っ張りは愛宕山か」とか「この谷間は笄川だな」とか「やっぱり淀橋台は下末吉面だからかなり高い台地だな」とか、立体モデルならではの面白みを感じることができるのですよ。
ある程度東京の凸凹に興味がある方なら周知の知識ではありますが、こういうことを知っているとさらに面白いモデルだってことですね。

どうですか、ちょっと興味が沸いてきたのではありませんか? そんなあなたにオススメの iOSアプリがこちら! 「東京時層地図」! パパパパッパパー!(青いネコ型ロボット風に)
http://www.jmc.or.jp/app/iphone/tokyo/
1900円とiOSアプリにしてはお高めですが、それに見合うだけの価値があるアプリです。私自身、これを開かない日はないというほどお気に入りのアプリです。特にiPadの大画面だとさらにその価値が増します。
明治初期から昭和末期までの古地図を六種類も内包している上に、現在のGoogleマップにも対応し、さらに例の「数値地図5mメッシュ(標高)」による色分け標高地図まで収録されています。このアプリがあれば明治以降の東京の発展と、それがいかに地形(標高)に影響されているかを感じることができます。

ちなみに江戸時代の地図が見たければこんなアプリもあります。
http://www.bemap.co.jp/service/konjaku.html
こちらの「今昔散歩」はiPhoneだけでなくandroidにも対応しています。iPhone版とandroid版は無料、iPad版は1800円です。

この二本のアプリがあれば江戸から平成に至るまで、江戸・東京という街がどのように形成されてきたのがよく判ります。東京の街歩き好きには必携のアプリと言えましょう(ステマステマ)。

なお、無料で済ませたい方にはプロバイダの大手gooさんが展開している「goo地図」というサイトでも明治の古地図や昭和の航空写真を重ね合わせて見ることができるのでオススメ!
http://map.goo.ne.jp/
特に航空写真は貴重ですよ。

そんなこんなの東京地形関係のお話でした。あまり興味の無い方には済みませんでした。
で、現在発売中の都市出版「東京人」八月号にはこれらの話題がまとめて掲載されているのでこちらもオススメです。
http://www.toshishuppan.co.jp/tokyojin.html
私は三冊買いました。雑誌って販売期間が過ぎるとなかなか手に入れられなくなりますからね。念のためにです。いつも面白い「東京人」ですが、今号の特集「凸凹を遊ぶ 東京地形散歩」は特に面白い。幅広く実に丁寧に編集されています。
ちなみに本誌80-81頁に特集されている「地形を知るためのブックガイド」に紹介されている東京地形関係書籍21冊を全て持っていたのはご愛敬です。どれもオススメですが、どれか一冊というのなら、初心者向けには「東京「スリバチ」地形散歩」(皆川典久/洋泉社)、中級者には「東京の空間人類学」(陣内秀信/ちくま学術文庫)、上級者には「「春の小川」はなぜ消えたか」(田原光泰/之潮)でしょうか。
オススメされても興味の無い方にはまったく意味がありませんが、ちょっとでも興味のある方ならチラッと立ち読みでもしてみて下さい。意外な発見があるはずですよ。

2012/07/15

テシタル地上派 030 スリバチカフェ2 その二

さあて、いよいよ本題の「スリバチカフェ2」について話す時が来ましたよ。来ましたよっていうか、私が書くだけなんですけど。書けばいいだけの話なんですけど。なかなか書くのって体力いるよね。ブログで毎日のようにガンガン長文書いてる人ってスゲエなと思います。

私はボチボチと行きますよ。前回書いた前提条件三つ、まず「東京スリバチ学会」という土地のデコボコを楽しむ人々がいるというコト、次に国土地理院が発行 するデータを使って東京のデコボコを立体モデルにした人々がいるというコト、そして「プロジェクション・マッピング」という手法があって立体に動画を映し 出すのが面白いというコト。
この三点を踏まえた上で「スリバチカフェ2」で体験したことをご説明したいと思いますよ。

そもそも2があるってことは1があった、ってコトでして、今年の2月に東京スリバチ学会会長・皆川典久さんが出版した「凹凸を楽しむ東京「スリバチ」地形散歩」(洋泉社刊・2200円)という書籍の出版記念イベントがあったのですよ。それが「スリバチカフェ」。
神保町の南洋堂という建築専門書店にあるギャラリーにて行われたイベントなのですが、例の東京デコボコ立体模型を作ったのがその南洋堂の店主さんらしいで す。この時はプロジェクション・マッピングはなく、その模型「東京の微地形模型」を眺め、エスプレッソを飲みながら色々お話ししましょう、という企画だっ たようです。なるほど、だからスリバチカフェなんですね。



これが何も写されていない状態
 この「東京の微地形模型」という立体が実に面白い。1.5m四方のMDF材という合成木材をコンピュータ制御加工機で削ったもので、かなり精密な仕上がり です。もちろん高さ方向に関してはリアルな縮尺で作るとあまりに微妙な凸凹になるので、おそらく十倍程度に強調されています。
いままで色々な手法で平面による東京凸凹地図を見てきましたが、やはり立体には敵いません。しかも立体地図も色々見てきましたが、このサイズで、しかもこれほど近くで見られる機会もそうそうありません。
ちなみに収録範囲は意外と狭くて、北は日暮里、西は中野、南は品川、東は両国あたりまで。南北は山手線がちょっと欠けるといったカンジです。台地で言えば上野台から高輪台まで。東京の中心部に限られていますが、それがまた精密度を上げています。






地形を濃淡で表現
で、今回の「スリバチカフェ2」ではその模型にプロジェクション・マッピングを施す15分の動画が投影されます。つまり、凸凹模型をスクリーンとして、そこに東京の様々な要素を動画で載せていくワケです。
映し出させるモノは様々です。鉄道・道路などのインフラ、お堀・開渠・暗渠などの水系、緑地帯、江戸の古地図などなど、様々なレイヤーが美しい音楽と共に現れては消えていきます。
そして圧巻なのは海面移動。縄文海進を映し出せば縄文時代にどこまでが海だったのかが判ります。そして、さらに怖ろしいのが淡々と1m単位で海面を上げていく部分。つまり、もしも津波が襲った場合、何mまで海面が上がればどこまで海に沈むかが示されるのです。30mまで上がれば東京はほぼ海面に沈みますし、40mでは遂に新宿が消えました。最後まで粘ったのが甲州街道。半蔵門から四谷を経て新宿に繋がる甲州街道が山の手の内側で最も高い場所だというコトがよく判ります。甲州街道に沿うように玉川上水が引かれていたのは尾根筋、つまり高い場所を選んで引かれていたのですね。
緑地帯

当日は多くの凸凹ファンがひっきりなしに訪れ、立体モデルに見入り、プロジェクション・マッピングに驚き、写真を撮り、エスプレッソを飲み、グッズや書籍を買い、皆川会長らと談笑をしていました。しかも某有名地形系番組のプロデューサーさんも参加して映し出される映像に解説を加えていました。
私も三回しほど映像を見ながら、壁に貼られた終戦直後の東京空撮写真なども楽しみました。本当はもっと長く居たかったのですが、どんどんお客さんがいらっしゃるので交代していかないとスペースがなくなるのですよ。

主要道路


東京人とマニアパレルさんの地図記号手ぬぐいを購入








標高データという無味乾燥なデータを立体モデルに再構成し、そこに本来は平面情報である動画を投射することによって立体化し動きも加えるという有機的な繋がり。それぞれが面白いモノが組み合わさって更に面白くなるという体験でした。

興味はありながらも見逃してしまって残念な思いをしていらっしゃる方に朗報です。神保町・南洋堂さんの4Fギャラリー「N+ GALLERY」さんでは今後暫く毎週土曜日の14:00〜19:00に「続編 東京の微地形模型」展を行うとのことでした。
http://www.nanyodo.co.jp/nplus2/tm_tokyo2_2.html
期間や上映時間などの詳しい情報は会場にお問い合わせ下さい。入場無料です。
そのイベントのプロモビデオがこちらです。


私も初めて南洋堂さんに行きましたが、建築書籍専門でありながらかなり幅広く取り揃えており、東京の凸凹関係の書籍もたくさんありましたよ。私も何冊も買っちゃいました。土曜日に神保町近辺に行く用事がある方はフラッと寄ってみるのもよいのではないでしょうか。


ああ、そうだ! ついに「ZIPANG PUNK〜五右衛門ロックIII」のキャストが発表になりましたね。
http://www.goemon3.com/
今回もイケメン、美女からまったく予想外の大御所まで、多彩で豪華なゲストをお招きしてお送りします。どうなるかは見てのお楽しみ!

2012/07/12

テシタル地上派 029 スリバチカフェ2 その一

さて、前回は「東京地形関係のイベントに行ってきましたよ」ってトコロまで書いたんでしたよね。いや、コレがホントに面白かったんですって!
そのイベントのタイトルは「スリバチカフェ2」! ん? スリバチ? カフェ? 2? と色々と疑問に思うことは多かろうとは思いますが、まあそういうイベントなの!

この話を面白がるには色々と前提条件がありまして。まず、「東京スリバチ学会」という集団が居ることを知って下さい。
学会とは付いていますが、要するに東京のデコボコを知って楽しもうよというような団体のようです。多分。
いや、私もよくは知らないのよ。面白そうな団体がいるなあ、程度の認識しかなくて。ただ、会長である皆川典久さんが今年の頭に出版された書籍「東京「スリバチ」地形散歩」という本も買って読んで面白かったし、あと「タモリ倶楽部」にもご出演なさっていたし。とにかく東京地形ファンとしては気になる学会だったのですよ。

次に知って頂きたいのは国土地理院から「数値地図5mメッシュ(標高)」というCD-ROMが発売されており、このデータを読み込めば誰でも日本の大都市ならばその詳細な標高データを手に入れられるというコト。
もちろん私も持っていますし、これを「カシミール3D」などの3D地図作成ソフトに読み込ませれば、あっという間に美麗な3D地図が描けるのです。

もう一つだけ、知っておいて頂きたい技術がありまして、それを「プロジェクション・マッピング」と言います。これは「立体物に動画を投影して、その立体物が動き出したかのような効果を出す映像技術」です。ほら、普通プロジェクタで動画を映し出す時って白い壁とかスクリーンに映すじゃないですか。結婚パーティーで二人の生い立ちとかなれそめとかを紹介する時とかさ。それをあえてデコボコのある立体物に映し出すことによって不思議な感覚を得ることができるのです。

演劇好きの方ならば、最近ケラさんがナイロン100℃の映像でよく使っている技法、だと言えばおわかり頂けるのではないでしょうか。ほら、セットにセットの映像を映し出して人が現れたり消えたりするヤツ。ちなみに映像作家は上田大樹さんで、新感線の映像も手がけて頂いています。


さて、これらの情報は理解しましたか? いや、理解して頂いていなくても構いません。何となく、ああ、そうなんだとだけでもご理解下さい。で、とりあえずこのまま説明を続けますと、「数値地図5mメッシュ(標高)」のデータを使って1.5m×1.5mの立体地図(木材ボードを削って15cm位の厚みのある本当の立体です)を作った人がいて、これに東京の道路や鉄道、川などをプロジェクション・マッピングで投影する15分の映像を作った人がいて、それが展示されているギャラリーがあって、そこで書籍「東京「スリバチ」地形散歩」の大ヒットを記念してイベントが開かれた、というのが「スリバチカフェ2」なのです!

ええと、私の盛り上がりに対してついてこられますでしょうか? 個人的には待ってましたとばかりのアイデアなのですが、今ひとつ伝わりにくいかもしれませんね。
東京のデコボコを可視化しようという企画は以前からありまして、もちろん私が大好きな国土地理院発行「1:25,000 デジタル標高地形図」という地図がありますし、
先述の「カシミール3D」によるPC画面上での3D表示方法はありました。
しかし、やはり立体を理解するには立体が一番なんです。
デコボコを立体で直感的に鑑賞できる! しかも、そこにプロジェクション・マッピングされる! これはなかなか有りそうで無かった企画です!

と、やや興奮気味にご紹介しましたがおわかりでしょうか? そしてここまでの前提条件を書いているだけで結構なスペースを使ってしまいましたので詳細は次回に。

なんだよ! ここまで書いて後は次回かよ! とお思いの方もいらっしゃいましょうが、まあそういうことです。
待ちきれない方は「スリバチカフェ」で動画とか検索とかして頂けると大体は判ると思いますよ。